在宅勤務に伴う交通費支給の見直し(4)システムにあわせた制度設計を(後編) - (page 2)

伊藤裕之 (Works Human Intelligence)

2020-12-21 06:45

 もし「手当」であれば、制度はなるべくシンプルにしたうえで、ある程度従業員の選択に委ねたほうがよいでしょう。申請内のチェックにおいても最低限の支給許容率は保ちつつ、なるべく人的なチェックを省略することで、担当者の運用工数低減と従業員の納得性という双方のメリットを追求すべきでしょう。

 逆に「実費」であれば、条件を明確化したうえで、申請内の機械的なチェックや担当者のチェックを支給条件に合わせて定型化し、個別の事情に合わせた都度の判断を極力少なくするという運用設計が必要となります。

(3)システムにあわせた交通費支給の条件設計も視野に

 交通費の支給条件を利用中の申請システムの仕様に合わせるというのも一つの考え方です。

 もはや、今後通勤手当の申請を紙ではなく何らかのウェブ申請サービスで実施することは避けて通ることはできないでしょう。これだけ制度や運用が変化していく現状で、一定の制度設計と担当者の理解と運用工数消化を前提にした紙ベースの申請では、今後の変化に適切な対応を行っていくことはできません。

 そのため、利用している申請サービスの仕様や機能要件に制度や業務を合わせるというのは業務効率化という観点では理にかなった方法の一つです。

 ただ、多くの企業の事例に携わって感じることではありますが、適切な通勤経路の決定は、最終的には人間の脳(経験や常識から導き出されたもの)が速くて正確、ということも多々あります。

 単に判定ロジックや経路の優先順位をシステムに当てはめようとしても、片方がうまくいけばもう片方がうまくいかない。そうして結局、申請上に表示されて決定された経路が本当に正しいのかシステムだけでは判別できずに、担当者が全件チェックせざるを得ない、という本末転倒なケースは避けなくてはなりません。

  • システムでは必要最低限の制限は行い、そこからはみ出たケースのみ担当者でチェックを行う
  • システムで実現できない、あるいは他の条件を阻害する条件は制度から外す

といったように、最終的なチェックが残ることによる担当者負荷や、制度を外すことによる超過金額の妥当性を踏まえつつ、判断してはいかがでしょうか。

完ぺきを求めず適度な「割り切り」で負荷を軽減

 通勤手当の経路及び交通費の支給額決定は明文化されていないことも多々あり、担当者のチェックと判断によって支えられてきました。その結果、システム化を妨げるとともに、非効率な業務運用の原因ともなっていました。今回の在宅勤務やテレワークへの移行という流れが、通勤手当の意義を改めて整理し、変化に耐えうる制度と進化させるきっかけになるといえるでしょう。

 また、通勤手当については、ある程度「割り切ること」も大切です。会社側ですべてコントロールできない要素が多い通勤手当業務は、すべてを満たそうとすればするほど担当者の負荷に直結します。

  • ここまではシステムで自動制御するが、このパターンは担当者がチェックする
  • 育児や介護が必要な従業員以外は一律で同じ制度にする

 上記は一例ですが、何を重視し、それ以外の部分をいかに割り切ることができるかによって、変化にも柔軟に対応できる制度となるのではないでしょうか。

伊藤裕之(いとう・ひろゆき)
Works Human Intelligence カスタマーサクセス事業本部 シニアマネージャー
2002年にワークスアプリケーションズ入社後、九州エリアのコンサルタントとして人事システム導入と保守を担当。その後、関西エリアのユーザー担当責任者として複数の大手企業でBPRを実施。現在は、17年に渡り大手企業の人事業務設計・運用に携わった経験と、1100社を超えるユーザーから得られた事例・ノウハウを分析し、人事トピックに関する情報を発信している

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