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これからのデータセンターはおもしろい--Colt DCS代表の杉原氏

國谷武史 (編集部)

2020-12-02 06:00

 金融大手Fidelityグループでデータセンター事業を展開するColt データセンターサービスは、11月に千葉県印西市で最新鋭のデータセンター「印西3」を開設した。6月には、バイスプレジデント アジア・太平洋地域・日本代表として、IT大手各社で事業トップを歴任した杉原博茂氏が就任し、日本での事業体制を強化している。杉原氏に今後の事業戦略やデータセンタービジネスの展望などを尋ねた。

 2015年に設立されたColt データセンターサービスは、Fidelity内のColtグループの中核事業を担うという。データセンター事業は20年以上の歴史があり、現在は欧州やアジアを中心に26カ所のデータセンターを運営する。

Colt データセンターサービス バイスプレジデント アジア・太平洋地域・日本代表の杉原博茂氏
Colt データセンターサービス バイスプレジデント アジア・太平洋地域・日本代表の杉原博茂氏

 杉原氏は、フォーバルやインターテル、EMCジャパン(現デル・テクノロジーズ)、シスコシステムズ、日本ヒューレット・パッカード(HPE)、日本オラクル、オートメーション・エニウェア・ジャパンを経て就任し、HPEでは常務執行役員、オラクルでは代表執行役社長CEO(最高経営責任者)など要職を経験。印西3開設に伴う記者会見では、「データセンター事業は私にとって“終の棲家”」とコメントした(関連記事)。

 そのコメントの真意を尋ねると、「データセンターは、私がこれまでに経験したサーバーやネットワーク、ストレージ、ミドルウェア、アプリケーションといったITのあらゆる要素が集約される場所。そのような場所に携わるという意味で、“終の棲家”と表現させていただいた」と話す。同氏自身は2020年12月で満60歳を迎えるが、「私にとってデータセンタービジネスは新しいチャレンジ。これまでの経験を発揮し、着実な成長に臨みたい」との意気込みだ。

 印西3データセンターは、主要顧客にメガクラウドベンダーなどを位置付け、顧客ニーズに対応した“パイパースケール”を特徴として訴求する。1平方メートル当たり平均3375ワットの供給電力量を持ちながら、環境にも配慮した効率的な運用に徹することで、PUE(Power Usage Effectiveness)値は1.4としている。2022年竣工予定の「大阪京阪奈データセンター」も現在建設中で、印西3と同様に“パイパースケール”需要に対応する拠点と位置付ける。

 杉原氏は、データセンターの世界にいると、IT市場の現状と数年先の変化が手に取るように分かると話す。「現在の日本のIT市場規模は約27兆円とされ、2027年には30兆円に拡大するとの予想もある。成長の多くをクラウドが占めると見られるが、ITシステムがクラウド化しようとも、実体はデータセンターに集約される。お客さまは将来を見据えてデータセンターを計画していく。現在の動きが数年後の市場を支えることにつながる」

 事業戦略では、「トータルカスタマーエクスペリエンス(TCX)」と「パートナーエコシステム」を掲げる。杉原氏によれば、現在のデータセンターに対する要求は、単なるコスト競争力ではなく、顧客の将来のビジネス計画に深く関わり、ビジネスの成長を安定かつ確実に支えるパートナーだという。

 「われわれのお客さまは、その先のお客さまのビジネスに深くコミットするパートナーとして活動しているので、われわれもそのパートナーになる。場所やリソースを安く提供すればいいわけではなく、お客さまがビジネスを構想する段階から一緒に活動し、ビジネスに不可欠なインフラを確実に用意、提供する。その観点でデータセンターのプロとして、立地選びから設計、建設、システムやネットワークの構築、環境に配慮し障害を発生させない確実な運用を行う」

 「データセンターを利用されるのも、ビジネスを推進するのも“人”であり、その観点からTCXのための専門チームがお客さまと一緒に活動している。常時利用状況を分析し改善を図ることや、次のビジネスに向けた準備にも、シームレスにつながる活動を目指している」

 あえて競合優位性を尋ねると、杉原氏は自社回線を保有している点を挙げる。だが、元来、金融機関の顧客を多数抱える同社にとっては、証券取引に代表されるような超高速・大量のトランザクションを安定して確実に処理するITインフラの構築・運用する実績やノウハウになるようだ。「データセンターは裏方で、サーバーを安定稼働させたり電力消費を抑えたりする地道な活動も多いが、お客さまの実際のビジネス全体を分かっていなければできないこと」と話す。

 そうした点に目を向けると、データセンターのビジネスは決して地味ではなく、とても魅力的であるという。「例えば、Mobility as a Serviceなら世界中を走り回る膨大な車両のデータをいかに遅延なく集め処理し、シームレスにさまざまなサービスへ迅速に反映できるかが鍵になる。当然ながらそのためのデータセンターへの要求は極めて高く複雑で、専門性を必要とする。お客さまやパートナーと一緒に活動しなければ実現できない」

 「パートナーエコシステム」の具体的な取り組みは準備段階で、杉原氏は今後紹介していきたいとする。ただ、その内容はユニークな可能性を秘める。「かつてはメガクラウドベンダーをライバルとしていた企業が、現在ではパートナーとして一緒に活動していることからも分かるように、お客さまのビジネスのために手を取り合える状況に変わりつつある。私も歳を重ねて“丸く”なったので、さまざまな方々とぜひパートナーとして共に活動していきたい」

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