「CentOS」を後援しているRed Hatが、CentOSでは今後「『Red Hat Enterprise Linux』(RHEL)のリビルド版であるCentOS Linuxから、最新版のRHELの少し先を先行する『CentOS Stream』に重心を移す」と発表すると、多くのユーザーがソーシャルメディアで抗議の声を上げた。その声を聞いて、CentOSプロジェクトの共同創設者であるGregory Kurtzer氏は、自らCentOSの代わりになるRHELクローンを作ると発表した。「Rocky Linux」だ。
Kurtzer氏(現在は、好業績を上げているスタートアップControl Commandの最高経営責任者〈CEO〉を務めている)は、次のように述べている。
「私もコミュニティーの他の人たちと同じように、Red Hatが発表したニュースにショックを受けた。私が16年前にCentOSを始めた時には、LinuxディストリビューションにCentOSを使っている個人や企業が世界中にこれほど広がり、これほど影響が大きくなるとは想像していなかった」
CentOSを使っている企業には、誰もが名前を知っているような有名企業もある。このOSを活用している企業にはDisney、GoDaddy、RackSpace、トヨタ自動車、Verizonなどがある。また、GE、Riverbed、F5、Juniper、Fortinetなどの重要なテクノロジー企業がCentOSを使用した製品を作っている。
困っているのは、Hacker NewsやTwitterやRedditで不満の声を上げている一部のユーザーだけではない。この問題には、多くの大手企業も巻き込まれている。筆者は、何社かのこうした企業の幹部から、彼らが現状に不満を持っており、代替策を探しているという話を聞いている。その中にはRHELへの切り替えを検討している企業もあるが、他のLinuxディストリビューションを検討している企業の方が多い。最も多かったのはCanonicalの「Ubuntu」だ。
その一部は、今ではRocky Linuxを検討しているかもしれない。Kurtzer氏は次のように付け加えている。
「今回の予想外の展開への対応として、私は、新しいプロジェクトである『Rocky Linux』の立ち上げを宣言する。この名前は、今は亡きCentOSプロジェクトの共同創設者であるRocky McGough氏にちなんだものだ。私はグローバルコミュニティーで参加を募り始めており、2021年以降もCentOS 8を使用したい企業のシームレスな事業継続性を確保することを目的としたプロジェクトの設立のために、迅速にチームを結成しつつある。わずか一日で、このプロジェクトへの参加を希望する数千人の支援者から、圧倒的な反応があった」
どれだけ圧倒的な反応だったのだろうか。Kurtzer氏によれば、既に650人以上のコントリビュータ―が集まっているという。これは、立ち上げから48時間も経っていないプロジェクトとしては悪くない数字だ。
CentOSの方針変更に対する抗議や前述の企業の態度が示しているように、固定リリースモデルは現在も非常に大きな市場だ。ただしCentOSユーザーの大半は、すぐに決断する必要はない。Red HatのCentOS 7に対するサポートはRHEL 7のライフサイクルと同じ期間維持されるため、CentOS 7のユーザーは、2024年6月30日までサポートを受けられる。
また、RHELとCentOS 7のサポート期間は延長される可能性もある。ただし、既にCentOS 8を導入してしまったユーザーについては事情が異なる。Red HatがCentOS 8のアップデートを行うのは2021年末までだ。CentOS 8のユーザーはもともと、2029年までサポートを受けられると期待していた。CentOS 8ユーザーには「CentOS Stream」に切り替える手もあるが、これまでの反応を見る限り、多くのユーザーはそれを望んでいない。
多くのCentOSユーザーはRed Hatに裏切られたと感じており、別の選択肢を探している。一部の人にとっては(あるいは大きく増えるかもしれないが)、Rocky Linuxがその選択肢になるかもしれない。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。