「CentOS」の開発方針変更--ユーザーの声、レッドハットの見方は

Steven J. Vaughan-Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2020-12-11 17:52

 CentOSプロジェクトは、「『Red Hat Enterprise Linux』(RHEL)のリビルド版であるCentOS Linuxから、最新版のRHELの少し先を先行する『CentOS Stream』に重心を移す」と発表した。これは、CentOSが安定的な固定リリース方式のディストリビューションではなく、ローリングリリースのディストリビューションになることを意味している。CentOSのユーザーはこれに反感を募らせている。

 その理由を理解するには、まず最初に何が起こっているのかを理解する必要がある。ローリングリリースのLinuxとは、常にアップデートされているLinuxディストリビューションのことだ。「Arch」「Manjaro」「openSUSE Tumbleweed」などがこれにあたる。CentOS Streamは、RHELのアップストリーム(開発)ブランチになる。これは一見、CentOSがRHELのベータ版になるということのように見えるが、CentOSはこれを否定している。

 同社はCentOSのFAQで、「CentOS Streamは、RHELよりも先行してパッチや新機能を獲得することになる。つまり一般的に言えば、CentOS Streamに盛り込まれたパッチやランタイム機能のパッケージがRHELに反映されるまでは、CentOS StreamはRHELよりもバグが少なく、機能が豊富なものになる」と述べている。

 次に理解すべきことは、歴史的に、サーバー用のLinuxディストリビューションでは、多くの場合固定リリースモデルを採用しているということだ。例えばRed HatはRHELで固定リリースモデルを使用しているし、Canonicalもメインストリームの「Ubuntu Linux」でこのモデルを採用している。SUSEの「SUSE Linux Enterprise Server」(SLES)も同様だ。固定リリースモデルでは、主なバージョンは一定のスケジュールに従ってリリースされ、必要に応じてセキュリティパッチや小規模なアップデートが提供される。

 どちらのアプローチにも長所と短所がある。例えば、ローリングリリースでは、本番システムに大きな不具合が生じる可能性がある。一方、固定リリースのLinuxでは、大きな改善項目が導入されるまでに数カ月、ときには数年かかる場合がある。

 ローリングリリースのLinuxディストリビューションの中には、本番環境で使われているものもある。ただしそれらのほとんどは、「Clear Linux」や、「Fedora IoT」「Ubuntu Core」などのIoT用のディストリビューションだ。最新で最先端のソフトウェアを動かすことよりも、安定性と多様なソフトウェアを使えることの方が重視されるサーバーでは、ローリングリリースのディストリビューションはあまり使用されていないだろう。

 いずれにせよ、Red HatがCentOS Streamを本番サーバー用のOSとして見ていないことは明らかだろう。RHELをサーバーで使用している顧客が、RHELの次のバージョンがどうなるかを確認するために使うことはあっても、日常業務に使うかといえば答えは「ノー」だ。

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