NTTデータ経営研究所は4月23日、「新型コロナウイルス感染症と働き方改革に関する調査」の結果を発表した。同調査は3月6~9日、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが提供する「NTTコム リサーチ」の登録モニターを対象に実施した。働き方改革の取り組み状況の調査は、2015年から毎年実施している(2020年は新型コロナウイルスの感染が拡大し、急激な変化が予想されたため、同年のデータは今回の調査結果に組み込んでいる)。
同調査では、働き方改革の取り組み状況とその効果を経年で概観したほか、2020年3月から1年間にわたるテレワーク(在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務など)の推移を調査/分析した。加えて、2019年から調査している「就業時間外の連絡(つながらない権利)」について、経年比較を行った。その結果、主に3つの傾向が明らかになったという。
1.過去最多の56%の企業が働き方改革に取り組む
働き方改革に取り組む企業の割合は、前回調査(2019年5月28~30日に実施)の49.3%から6.7ポイント増加し、56%だった。この動きは従業員規模に関係なく見られ、従業員数1000人以上の企業では77.1%が働き方改革に取り組んでいた。働き方改革に取り組んでいる企業におけるプラスの変化は、「休暇が取得しやすくなった」「労働時間が減少した」が最も多く挙がった。また、「気持ちの余裕が生まれた」「プライベートとの両立ができるようになった」「生産性が向上した」などが前回調査と比べて増加した。
一方マイナスの変化は、「収入の減少」「生産性の低下」が最も多かった。「生産性」に関しては前回調査と比較して、プラスの変化とする割合が11%から15.6%と4.6ポイント増加したが、マイナスの変化とする割合も8.6%から11%と2.4ポイント増加し、二極化が見られる。
2.在宅勤務のボトルネックは、「ハンコ文化」よりも「社内の状況が分からない」不安
在宅勤務のボトルネックは「社内の状況がよく分からない」(38.7%)が最も多く、「紙の書類を前提とした押印などの手続きがあること」(24.6%)を14.1ポイント上回った。自宅の仕事環境に起因するボトルネックには、「通信回線が不安定」(15.4%)、「作業スペースが確保できない」(15.2%)、「家族がいて仕事がはかどらない」(9.3%)などがあった。このことから、ハンコ/紙文化の弊害や自宅の仕事環境の課題よりも、「社内の状況が分からない」ことをボトルネックと感じている人が多いと分かった。
在宅勤務でウェブ/電話会議を実施したことがある回答者のうち、雑談を目的とした会議を週1回以上実施している人は25.8%、業務に関する会議の前後などに雑談する人は32.6%だった。従業員の状況が分からないことが在宅勤務の課題と感じている人が最も多いことから、ウェブ/電話会議の際に雑談をするのは、在宅勤務を推進する上で重要な施策だとしている。
在宅勤務に取り組んでいる企業の回答者のうち、82.5%が「通勤時間を削減できること」などを理由に、在宅勤務を継続したいと考えている。一方で、23.2%の人は「できる仕事に限界がある」「仕事と私生活の区別がつかない」などを理由に、継続は可能であっても在宅勤務を実施したくない、継続は困難と感じるとしている。
3.働き方改革が進展する一方、就業時間外の対応が増加
在宅勤務で従業員が退勤したか否かが分からないなどの理由で、就業時間外も連絡してしまい、相手が対応しなければいけないことが増えているという。上司から就業時間外に業務に関して緊急性のない電話やメールがあり、通話/返信などに週1回以上対応している人は、前回調査の14.9%と比べて22.5%と7.6ポイント増加した。同僚では、13.5%から25%と11.5ポイントの増加が見られる。
「できれば対応したくないが、対応するのはやむを得ない」と考えている人は、46.7%と最多(前回は46.5%)である。同僚という気軽さから就業時間外に連絡してしまう傾向があるが、連絡を受ける側は「できれば対応したくない」と考えていることが浮き彫りとなった。