テラスカイが打ち出した「経営幹部候補の募集・育成プロジェクト」の背景

松岡功

2021-06-25 12:18

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、テラスカイ 代表取締役社長の佐藤秀哉氏と、NEC 取締役執行役員常務兼CTOの西原基夫氏の発言を紹介する。

 

「テクノロジーへの感度が高く、それをビジネスにつなげられる人材を望む」
(テラスカイ 代表取締役社長の佐藤秀哉氏)

テラスカイ 代表取締役社長の佐藤秀哉氏
テラスカイ 代表取締役社長の佐藤秀哉氏

 テラスカイは先頃、同社グループの次代の成長を担う経営幹部候補を募集して育成するプロジェクトを開始すると発表した。佐藤氏の冒頭の発言はその発表会見で、応募者に求める人材像として最も重要なポイントについて述べたものである。

 会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは筆者が注目した佐藤氏の発言を取り上げたい。

 テラスカイの直近の業績や活動については2021年4月23日掲載の本連載記事「テラスカイ社長が語る『安定的な高成長』の背景と懸念」を参照していただきたい。このタイトルにもあるように、同社の業績は「安定的な高成長」を続けている。

 佐藤氏は今回のプロジェクトを開始した理由について、「テラスカイグループは連結の売上高が100億円超、従業員数1000人未満の規模だが、特定のテクノロジーとそれによるビジネスにこだわりと持つ人たちが集まり、今日までグループを拡大してきた。しかし、これから売上高を1000億円、さらにその先へと大きくしていくためには、グループを統率しリードしていける経営幹部を育成していく必要がある」と説明した(図1)。

図1:テラスカイグループの概要(出典:テラスカイ)
図1:テラスカイグループの概要(出典:テラスカイ)

 今回のプロジェクトを推進するに当たって、同社が見据えているのは2030年以降だ。「10年後はIT分野の中身もかなり変化し、おそらく量子コンピュータに関わるテクノロジーが今以上に注目の的となっているだろうが、それをビジネスにするためには、今からしっかりと取り組んでいく必要がある。そうした先を見据えた活動を一緒にやりながら、テラスカイグループの将来を担っていく経営幹部を育成していきたい」と佐藤氏は言う。

 応募者に求める人材像としては、表1に示す内容を挙げた。経営幹部候補なので、これだけ高い水準の条件を示すのは当然だろう。特に最初の項目について佐藤氏は、「テラスカイグループはテクノロジーカンパニーなので、ITについてしっかりとした見識と知見を持つ人材がふさわしいと考える」と説いた。

表1:経営幹部の応募者に求める人材像(出典:テラスカイ)
表1:経営幹部の応募者に求める人材像(出典:テラスカイ)

 これを聞いて、筆者の頭には異論が浮かび上がった。「テラスカイグループが将来に向けて本当に大きくなっていきたいのなら、経営幹部にはIT分野の出身者だけでなく、他業種から柔軟な発想を持つ人材も積極的に起用したほうがいいのではないか」と。会見の質疑応答でそう聞いてみたところ、佐藤氏は次のように答えた。

 「そういう考え方もあるだろうが、やはり私たちはどこまで行ってもテクノロジーカンパニーなので、経営幹部候補としてはテクノロジーへの感度が高く、それをビジネスにつなげられる人材を望みたい」

 冒頭の発言はこのコメントから抜粋したものである。逼迫(ひっぱく)した人材不足の中で、果たして応募の動きはどうなるか。佐藤氏にすれば、今回のプロジェクトでグループ内にも刺激を与えるつもりなのだろう。今後の展開に注目していきたい。

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