本連載では、筆者が「気になるIT(技術、製品、サービス)」を取り上げ、その概要とともに気になるポイントを挙げてみたい。今回は、竹中工務店、日本IBM、マスプロ電工、NTTコミュニケーションズの4社が共同開発した「RFIDタグによる室内環境センシングシステム」を取り上げる。
室内環境データの効率的な収集を可能にするシステムを開発
竹中工務店、日本IBM、マスプロ電工、NTTコミュニケーションズの4社は先頃、RFIDタグによる室内環境センシングシステムを共同開発し、横浜市役所などに導入したと発表した。
写真1:横浜市役所の外観(出典:竹中工務店)
新システムは、電波によってデータの読み書きができる通信技術「RFID(Radio Frequency IDentification )」タグと温度センサーなどを組み合わせた環境センサーを、アンテナからの電波で起電させ、データを送受信し、室内環境データの効率的な収集を可能にするシステムである。(写真1)
従来、センシングシステムには有線式が用いられることが一般的だが、有線式の場合、配線の都合によりセンサーの設置場所が壁や天井に限られるため、居住域内の快適性を確保するために必要な室内環境データを十分に収集することができなかった。
そのため、電波などを利用した無線式のセンシングシステムの開発が進められているが、無線式センサーの電源は電池が必要なタイプが主流であり、電池交換などの維持管理に手間がかかるのが現状だ。
今回の新システムは、RFIDタグを電波により起電することにより、無線式でありながら電池交換が不要な室内環境センシングシステムとなっている。アンテナの電波が届く範囲においては、複数データの同時での読み取りや、移動しているRFIDタグの読み取りなども可能なことから、室内環境データや人の在不在データなどを効率的に収集することもできる。(図1)
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竹中工務店は3社と協力し、新システムの展開を進め、収集したビッグデータを用いた新しい設備制御の在り方を創出し、さらなる省エネルギー性、快適性、知的生産性の向上に活用していく。さらに、人の在不在データから人流を把握し、昨今のコロナ禍において社会的ニーズとなりつつある新しいワークプレイスの提案などと合わせ、持続可能な脱炭素社会、そして日本政府が推進する「Society 5.0」の実現に寄与していく構えだ。