NECは9月7日、無線ネットワーク環境を用いて重機を遠隔操縦するサービスの提供を10月に開始すると発表した。また、建設現場を想定した実証フィールドをNEC我孫子事業場に新設し、サービスの検証や新サービスの開発に活用していく。
建築土木業界では、熟練職人の高齢化や若手就業者の減少が進み、増加するインフラ補修工事・災害復旧工事への対応が困難な状況にある。従来の危険で過酷な現場のイメージを払拭し、性別や年齢を問わない多様な人財を呼び込むことで、労働力を確保していくことが急務となっているという。
新サービスは、建設現場にWi-Fiやローカル5G(私設型第5世代移動体通信システム)などの無線ネットワークを構築し、現場のカメラ映像を遠隔地にいる操縦者がリアルタイムに確認しながら重機を操縦できるようにするもの。同社が開発した「適応遠隔制御技術」を搭載し、通信の実効伝送量を予測し、伝送量に見合う安定した映像伝送と操作が可能になっている。通信品質の変動が頻発する無線環境下でも、遅延を予測して安定した映像を伝送するとともに、操作コマンドの到達遅延も予測することで、長時間にわたってスムーズな遠隔操縦が可能となる。
重機遠隔操縦サービスの概要(出典:NEC)
また、通常の無線による映像伝送では、カメラ台数を少なくしたり画質を落としたりするなど、通信容量にマージンを持って設計する必要があった。その結果、操縦者は十分な視覚情報を得られず、遠隔操縦の操作性は大きく低下してしまうという課題があった。
新技術では、無線通信の品質に応じて動的に映像伝送量を制御するため、マージンを減らすことができる。そのため、カメラ台数を増加したり画質を向上したりできるようになり、操作性の改善が可能になる。さらに、現場の追加・変更や制御エリアの変更にも柔軟に対応し、全国のどこからでも施工に参加できるようになるという。
NECの我孫子事業場に新設した実証フィールドでは、小型のバックホウでダンプカーに土砂を積み込み搬送する一連の作業を、無線ネットワークを介して操縦室から遠隔操縦できる環境が整備されている。今後は、サービスのデモ環境に加え、顧客の拠点と接続した超遠隔操縦や重機の自律施工など、建築土木業界の課題解決に向けた新しいサービスの検証、開発を共創する場としても活用していくとしている。