編集部からのお知らせ
新着の記事まとめ「Emotet」動向

量子技術と国防--活用方法を模索する防衛機関

Aimee Chanthadavong  (ZDNet.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2021-12-08 07:30

提供:Getty Images
提供:Getty Images

 オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は以前、同国の量子技術の新興セクターが2040年までに40億オーストラリアドル以上の年間売上高を生み出し、1万6000人の雇用を支えるとの予測を示していた。

 このセクターは非常に重要になる見込みで、オーストラリアの首席科学官であるCathy Foley氏が先頃、バーチャルイベント「Collaborate Innovation 2021」の観衆に対し、オーストラリアの国際的な競争力を維持するためにこの業界を優先的に扱う必要がある、と語ったほどだ。

 「この分野は大きな影響力を持つようになるだろう」(Foley氏)

 オーストラリアの国防省は、この急成長中のセクターを有効に活用したいという考えから、量子技術を戦争だけでなく他の分野でも利用する方法を模索しようと対策を講じている。

 「量子技術は、天然資源、土木工学、薬理学、病気の早期発見、医療研究、物流、金融などの分野で利用されており、今後も利用されるはずだ。量子技術は最終的に、私たちの生活のあらゆる側面に広がっていくだろう」。国防省の広報担当者は米ZDNetにこのように語った。

 むしろ、国防省はすでに量子技術の展開における初期の利益を享受しつつあり、オーストラリアの研究者によって開発された「Sapphire Clock」と呼ばれる極低温サファイア発振器を使用して、「Jindalee」超水平線レーダーネットワークの運用を改善しているという。

 「Sapphire Clockによって、タイミングの精度が1000倍に向上する。これは、オーストラリアの国防機関が国家への脅威を特定するうえで有効だ」と国防省の広報担当者は述べた。

 国防省は、量子技術がGPSの代替ソリューションになる可能性があるとも考えている。というのも、GPSは複雑な地形や衛星受信が困難な場所(水中、山岳部、密集した都市環境など)では信頼性が低い場合があるからだ。国防省は現在、精密誘導兵器、暗号、タイムスタンプインテリジェンス、分散コンピューターシステムの同期など、さまざまな国防活動にGPS技術を使用している。

 「これは、量子時計、加速度計、磁力計、重力計の開発、小型化、成熟によって達成される。こうしたものを古典技術と融合し、両者の長所を組み合わせて、タイミングとナビゲーションの最適なソリューションを実現する」(オーストラリア国防省)

 国防省は、量子技術の機会を他の方法でも模索して活用する意向であり、それについて「Army Quantum Technology Roadmap」(陸軍量子技術ロードマップ)(PDF)で概要を説明している。この報告書では、量子技術の潜在的な用途として、センシングとイメージング、通信と暗号、コンピューティングとシミュレーションなどが挙げられている。

 量子技術は軍事計画の策定に役立つ可能性があるが、予期せぬ結果を招くおそれもある。

 「状況を一変させるほどの可能性と、曖昧さ、複雑さが混在しているため、戦略的なリスクと機会の両方を地上軍にもたらす。その結果、陸軍は量子技術を理解して共同開発し、地上作戦に生かすための熾烈な国際競争に巻き込まれるだろう」。同報告書にはこう記されている。

 「量子センシング技術により、磁場、加速度、重力場などの感知において新たな水準の感度が実現し、これが新たな機能へとつながる可能性がある」と国防省の広報担当者は述べた。

 「量子通信技術は、極めて安全性の高い通信を実現する可能性を秘めている。量子コンピューティングには、現在の古典コンピューターでは解決不可能な問題を解決できる可能性がある」

 量子技術のさらなる探求を目的として、オーストラリア陸軍は2020年、「Quantum Technology Challenge」を初めて開催した。このコンテストでは、オーストラリアの量子科学者とエンジニアのチームが競い合って、量子技術を概念的に提供する方法を紹介した。設定された具体的な課題には、量子イメージングによって地面を「透明」にすること、無人搬送車を用いた戦場の兵士への補給、量子暗号化による通信の保護などがあった。

 また、国防省は先頃、暫定スケジュールとして2022年8月に開催予定のQuantum Technology Challengeで発表するソリューションを募集した。

 国防省は、電磁放射体の検出、位置特定、識別の精度、範囲、帯域幅を量子センサーによって改善できるかどうかを、2022年にテストしたいと述べている。また、量子コンピューターが信号や画像の特徴をより正確かつ効率的に識別し、分類できるかどうか、さらには、ポスト量子暗号を実用化して、量子コンピューターの脅威から通信を保護できるかどうかについても検証したい意向だ。

 同省はまた、オーストラリアで開発される量子技術を支援しなければ、他国に取り残されるリスクとなるかもしれない、としている。

 「オーストラリアは、量子技術の多くの分野で世界トップクラスの専門知識を有している。オーストラリアが取り残されないよう、支援と開発を続けていく必要がある」。広報担当者はこのように語った。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

特集

CIO

モバイル

セキュリティ

スペシャル

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNet Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]