海外コメンタリー

従業員をオフィスに戻すことはますます難しく

Steven J. Vaughan-Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2022-01-11 06:30

 コロナ禍が始まってから月日は流れた。大量離職も続いている。一部の経営者は、手厚い失業手当の支給が止まれば、人々はまたオフィスに戻らざるを得ないだろうと思っていたかもしれないが、その考えは間違っている。米国の共和党が強い州では、連邦政府による週300ドルの追加給付(約3万3000円)がカットされ、他の給付金も終了してから何カ月も経つが、労働者が職場復帰を急ぐ様子はない。これには多くの理由がある。多くの人は新型コロナウイルスに感染したくないと思っているし、酷い仕事にうんざりしている人もいれば、早期リタイアを決めた人もいる。その中でも筆者が今一番気にしている要因は、多くの上司が現在も熟練した労働者をオフィスに無理矢理戻すことができると考えていることだ。

 すでに別の記事でも書いたことだが、あらためてもう1度言おう。そんなことは起こらない。有益なスキルを持った優れた人材は(多くの技術者はこれに当てはまる)、これまでのような働き方には戻ろうとしていない。

 これは別に筆者の個人的な意見ではない。報道されている数字を紹介しよう。

 英国の技術者2000人を対象としたhackajobの調査では、4分の3弱(72%)の技術者が、リモートワークが可能なことは自分にとって非常に重要だと回答している。また5人に1人強が、リモートワークができる転職先を探していた。

 最近行われたMicrosoftの調査では、英国の労働者がこの問題に関してさらに強い意見を持っていることが分かった。この調査では、回答者の半数以上が、オフィスへの復帰を強制されたら退職を検討すると述べていた。

 これは英国だけの現象ではない。米国、英国、オーストラリア、フランス、ドイツ、日本のナレッジワーカー1万人以上を対象としたFuture Forum Pulseの調査によれば、多くの人が少なくとも就業時間の一部はリモートで働きたいと考えている。正確に言えば、回答者の76%が働く場所に関する柔軟性を求めており、93%は働く時間についての柔軟性をほしがっていた。リモートワークを希望する理由として回答者が一番に挙げたのは、「ワークライフバランスの向上」だった。

 問題は、多くの経営陣や企業オーナーが状況を理解していないことだ。現在リモートで働いている経営陣や企業オーナーの44%は毎日オフィスで働きたいと回答していたが、従業員でそう答えたのはわずか17%だった。また、上司の4分の3が「オフィスで少なくとも週3~5日は働きたい」と答えていたのに対して、従業員で同じように考えていたのは34%にすぎなかった。そこには大きな分断があると言っていいだろう。

 重要なポイントは、私たちは今、私の知る限り初めて、雇用者ではなく労働者が主導権を握る時代を迎えているということだ。

 経営者が技術者にもっとも簡単に与えられる恩恵の1つが、在宅勤務を可能にすることだ。経営者の中には、自分が見張っていない限り、従業員はまともに働かないだろうと思っていた人もいるだろう。しかし、その疑いはすでに晴れたはずだ。Meta(旧Facebook)の最高経営責任者(CEO)であるMark Zuckerberg氏も、最近になって「私は、リモートで働くことで長期的な未来について考える余裕を作れるようになり、家族と過ごす時間も増えた。私は幸福になり、仕事の生産性も上がった」と述べている。

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