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内山悟志「デジタルジャーニーの歩き方」

DXに対してIT部門が示すべき方針--最悪のシナリオを回避するためには

内山悟志 (ITRエグゼクティブ・アナリスト)

2022-01-19 07:00

 デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みに対して、IT部門がどのような姿勢で臨むべきかについて普遍的な解はありませんが、無関係でよいというものではないはずです。IT部門は自社のDX推進に対してどのような役割を果たすかの方針を明確化し、社内周知することが求められます。

DXに関わるシステムの特徴とは

 IT部門のDX方針について考える前に、その前提としてまずはDXに関わるシステムの特徴について整理しておきましょう。ここでは、議論をシンプルにするために、あえて従来の一般的な業務システムをSystems of Record(SoR)、DXのためのシステムをSystems of Engagement(SoE)と単純に分類しています。

 SoRは、事前に要件を確定でき、既知で成熟した技術を活用することが多いため、ユーザー企業とシステムインテグレーター(SIer)など外部企業との役割を明確に分担でき、一括委託やアウトソーシングが可能なものが多いでしょう。一方で、SoEは、要件の面でも技術の面でも不確定要素が多く、試行錯誤を繰り返しながら実装していく必要があり、機動性と柔軟な対応が求められるため、内製化および自社運営が適していると考えられます(図1)。

図1.DXに関わるシステムの特徴(出典:ITR) 図1.DXに関わるシステムの特徴(出典:ITR)
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IT部門がDXから「蚊帳の外」となる最悪のシナリオとは

 多くの企業でDXを推進する動きが活発化しており、DX推進室などの専門組織を設置する例も増えています。取り組みが本格化している企業では、現場に近い事業部門でのデジタル化案件が増加し、案件によっては事業部門が主体となり推進し、DX推進組織は後方支援や環境整備に軸足を置く場合もあるでしょう。では、IT部門(情報システム子会社を含む)はどのようなスタンスでDXに臨み、役割を果たしていくべきでしょうか。

 企業のIT部門の多くは、主にSoR(既存事業を支える社内業務システムやITインフラ)の企画・開発・運用を担っており、決して人的余力が豊富にあるとは言えません。従来のIT関連業務を効率化することで人的余力を生み出し、それをDXに振り向けるべきという言説は間違ってはいませんが、それは決して容易ではありません。また、現存するIT部門のスタッフは、SoRの企画・開発・運用の経験や知見を豊富に持っていますが、SoEに関するスキルは不足していると言わざるを得ません。

 このように、IT部門ではDXプロジェクトに人員を振り向けるのが難しく、かつ適合するスキルが不足している状況下においては、DX推進組織や事業部門は、システム構築や技術採用の際にIT部門に頼るのを避け、外部のコンサルティング企業やITベンダーの力を借りる道を選ばざるを得ないという状況が発生します。もちろん、必要に応じて外部の支援を活用すること自体は決して悪くはありません。しかし、IT部門がDX推進において蚊帳の外にいると以下のような問題に直面することが懸念されます。

  • DXが各事業部門で独自に進められ、事業部門間の連携や相乗効果が期待できず、重複投資や同じ失敗の繰り返しといった問題が生じる
  • 既存システムとの連携性や全体的なアーキテクチャーが考慮されないシステムが乱立し、システム全体の複雑性が増長されたり、運用負荷が増大したりする
  • IT部門が知らないところでさまざまな技術や製品が導入され、ガバナンスやセキュリティの懸念が高まる
  • 本番稼働の直前になってIT部門にシステム運用が任され、準備が間に合わない

 しかし最大の問題は、一括委託やアウトソーシングが可能なSoRに関わる業務だけが社内に残り、内製化が適しているSoE案件の外部依存度が高まるというミスマッチな現象を引き起こすことにあります。結果、社内にSoEの企画・開発・運用に関するノウハウが蓄積されず、IT部門が現行業務から抜け出せないという最悪のシナリオをたどることになります。これは、IT部門にとってもDXを推進する部門にとっても、そして企業全体の継続的な競争力の観点からも非常に不幸なシナリオといえるでしょう(図2)。

図2.IT部門がDXに関わらないことによる悪循環(出典:ITR) 図2.IT部門がDXに関わらないことによる悪循環(出典:ITR)
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