日立ソリューションズは4月19日、仮想空間上に供給網(サプライチェーン)のデジタルツインを再現し、利益やコストなどをシミュレーションして試算できる「グローバルSCMシミュレーションサービス」にサプライチェーン全体の二酸化炭素(CO2)排出量をシミュレーションする機能を発表した。4月20日から提供を開始した。
数理解析を用いた計算モデルで発生するCO2排出量のシミュレーションや実績データをマスターとして設定すると、製品や部品あたりのCO2排出量も試算できるという。
施策立案とモニタリングが必要
日立ソリューションズは、新たな中期経営計画で持続可能な社会に貢献する「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」を意識した事業運営を主要方針の一つに掲げ、2022年度を「SX元年」と位置づけている。
日立ソリューションズ 産業イノベーション事業部 事業部長 大池徹氏
CO2排出量試算ソリューションに注力する理由として、同社 産業イノベーション事業部 事業部長 大池徹氏は「顧客とわれわれのサステナビリティ(持続可能性)を追求する事業に注力し、社会価値、環境価値、経済価値の提供を拡大させたい」と説明した。
政府は2030年までに温室効果ガス排出量46%削減(2013年比)と、2050年までに温室効果ガス排出量をゼロにするカーボンニュートラルの実現目標を掲げている。
日立ソリューションズ 産業イノベーション事業部 エンジニアリングチェーン本部 第3部 部長 小沢康弘氏
日立ソリューションズ 産業イノベーション事業部 エンジニアリングチェーン本部 第3部 部長 小沢康弘氏は「現状として、CO2排出量の可視化による情報把握しかできていない。または取り組みの過程にある企業が多い」と解説。同社は“可視化と削減は対である”と捉えており、目標に向けた施策立案とモニタリングが必要だと強調する。
現状を改善するため日立ソリューションズは、2020年7月にリリースしたグローバルSCMシミュレーションサービスに、事前に入力したサプライチェーンの各種マスター情報を数理最適化で算出し、サプライチェーン全体のCO2排出量を試算する機能を追加した。
設定可能なマスター項目は、原料生産時のCO2排出量、原料や製品のCO2排出量にかかる炭素税、輸送時のCO2排出量、製造時のCO2排出量、サプライチェーンに関わる制約条件としてのCO2排出量に対応する。
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日立ソリューションズ 産業イノベーション事業部 第1グループ グループマネージャ 間嶋信介氏
日立ソリューション 産業イノベーション事業部 第1グループ グループマネージャ 間嶋信介氏は以下のように主張した。
「販売計画など将来計画に対して発生するCO2排出量を事前のシミュレーションで評価可能。温室効果ガス排出量の削減に向けた取り組みの進捗を確認するとともに、設備やサプライヤー変更による温室効果ガス排出量削減の効果を評価できる。さらに工場排出量実績をもとに(原材料調達から廃棄までのCO2排出量を明示する)カーボンフットプリントの計算も可能。工場単位のCO2排出量を製品単位に分解し、BtoC企業においては消費者向け情報に活用できる」
さらに間嶋氏は「今後のSX時代を(企業が)生き残るため、ESG(環境、社会、ガバナンス)と利益獲得の両立が必要。今回のシミュレーションサービスによって発生しうるリスクをシミュレーションし、想定外の事態が発生した場合も、パラメーターを変更して最適な販売供給計画の立て直しや、現場への支持オペレーションを可能とする。社会的責任を果たしつつ、(企業の)事業継続性の維持を支援したい」と、グローバルSCMシミュレーションサービスの活用を促した。
今後は、省エネ管理業務を可視化できるというクラウドサービス「EcoAssist-Enterprise-Light」との連携も視野に含めている。
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