パナソニック、サプライチェーンソフト事業に本腰--ERP勢との違いも強調

國谷武史 (編集部)

2021-10-25 06:00

 パナソニック コネックテッドソリューションズ社(CNS社)は10月22日、都内で記者懇談会を開き、サプライチェーンソフトウェアビジネスの取り組みを説明した。パナソニックは、協業するサプライチェーンソフトウェア大手Blue Yonderの買収を9月21日に完了し、クラウドサービスや人工知能(AI)、画像認識などの技術と組み合わせたソリューションビジネスを本格化させる。

 Blue Yonderは1985年に設立され、35年以上に渡って製造、物流、小売の各業界向けのサプライチェーンソフトウェアに特化したビジネスを展開してきた。顧客は3100社以上を抱え、2020事業年度の売上高は10億ドル以上、420件以上の特許(申請中を含む)を持つ。

 パナソニックは、2018年にBlue Yonderとの協業を開始し、2019年に合弁で「Blue Yonder パナソニックビジネスソリューションズ」を設立。2020年7月に株式の20%を取得し、2021年4月に全株式の取得を発表、9月17日に完了した。

パナソニック 代表取締役 専務執行役員 PNS社 社長の樋口泰行氏、CNS 社 上席副社長の原田秀昭氏、Blue Yonder 最高経営責任者のGilish Rishi氏(左から)
パナソニック 代表取締役 専務執行役員 PNS社 社長の樋口泰行氏、CNS 社 上席副社長の原田秀昭氏、Blue Yonder 最高経営責任者のGilish Rishi氏(左から)

 懇親会には、パナソニック 代表取締役 専務執行役員 PNS社 社長の樋口泰行氏とCNS 社 上席副社長の原田秀昭氏、米国からリモートでBlue Yonder 最高経営責任者(CEO)のGilish Rishi氏が出席した。

 冒頭で樋口氏は、2017年に就任して以降、事業構造や社内体制、文化、意識、働き方などあらゆる面での変革を推進したことに触れつつ、Blue Yonderのサプライチェーンソフトウェアを中核としたリカーリングビジネスが新たな事業の主軸になるとの位置付けを説明。「ビジネスのみならず理念や企業文化の面でもパナソニックとの親和性がとても高く、経営でも多くの学びがある」と述べる。

 パナソニックは、2022年4月に持株会社体制に移行し、CNS社は「パナソニック コネクト」に改称する。樋口氏は、新体制などの詳細を別の機会に説明するとしつつ、懇親会の場で新しい企業ロゴを披露。「Panasonic」にBlue Yonderのコーポレートカラーの青色で「Connect」を組み合わせたデザインで、「One Teamになるためのもの」(樋口氏)という。

2022年4月に発足する「パナソニックコネクト」のロゴ。「Connect」の色はBlue Yonderのコーポレートカラーを継承したものという
2022年4月に発足する「パナソニックコネクト」のロゴ。「Connect」の色はBlue Yonderのコーポレートカラーを継承したものという

 Rishi氏は、Blue Yonderの経営概況を説明しつつ、特色について「お客さまの現場プロセスを深く理解し、お客さまとの共創を通じてビジネスを変革し、お客さまの結果と変革に貢献し続けている」と強調。世界的なコロナ禍でさまざまな産業のサプライチェーンが混乱し続ける中でも、調達、供給、配送、流通のサプライチェーン全体をエンドツーエンドで支えているとする。例として3月にスエズ運河で発生した船舶の座礁事故に伴うサプライチェーンの混乱を挙げ、「現場からのデータをリアルタイムに収集、可視化し、お客さまに迅速に代替手段を提案することにより、影響を最小限にとどめることができた」などと述べた。

 就任以来、樋口氏は、CNS社のミッションに「現場プロセスイノベーション」を掲げる。Blue Yonderのソリューションは、このミッションを具現化する上で重要な位置付けであるとする。パナソニックの画像認識技術やハードウェアなどと、Blue Yonderの「Luminate」ソリューションを組み合わせることで、業務現場からのデータの取得、クラウドへのデータの収集と画像解析やAI、機械学習などを用いた分析、データ分析から得た洞察や知見を業務の現場に迅速に反映する仕組みを実現させる。部材品や商品などの在庫、配送、流通、販売のリアルタイムな可視化、分析による改善や最適化のための施策の提案、実行、人的リソースの最適化までをカバーし、企業顧客が自律的で安定したサプライチェーンを実現できるようにしていくとする。

 近年のサプライチェーン領域は、地政学的な影響あるいは地球環境の保全といった多様な事象や課題を抱え、ITによる対応や解決への期待感が高まる。このため大手エンタープライズソフトウェア各社が、サプライチェーン領域に向けたソリューションの展開を強化している。

 競合優位性についてRishi氏は、「ライバルのソリューションも素晴らしいが、われわれはデータベースやCRM(顧客関係管理)、財務管理などのソフトウェアを手がけるわけではない。製造、物流、流通のサプライチェーンに特化し続けており、(人材ソリューションに特化する)Workdayのような存在と理解してほしい」と説明した。樋口氏は、「ERP(統合基幹業務システム)などの領域からアプローチしている他社とは異なり、パナソニックとBlue Yonderは現場を深く理解できることが強み。われわれのソリューションは現場のプロセス変革と親和性が高い」と述べた。

 両社共同での新たなソリューションの開発や展開は今後本格化していくとする。特にBlue YonderのLuminateは、Microsoft Azureを提供基盤としてクラウドサービス化を進めており、現場や現場に近いエッジ領域でのデータ収集や処理、活用をパナソニック、クラウド側での分析やその結果に基づく洞察、知見の創出、提供などをBlue Yonderが担う形になる。

サプライチェーンにおけるソリューションの概要
サプライチェーンにおけるソリューションの概要

 樋口氏は、サプライチェーン事業におけるハードウェア製品などの位置付けについて、「必ずしもパナソニックの製品にこだわるわけではない。Blue Yonderのお客さまのデータやニーズのもと、最適なものをご提供していく所存」と説明。また、「世界的には、製造や流通、物流の現場でもパッケージソフトウェアやクラウドサービスの導入が進みつつある。一方で、個別最適のシステムが使われている日本の現場はこれからになる。単にソフトやサービスを提供するだけでは不十分であり、製造業としてのパナソニックの経験も生かしたコンサルティングやサポートを含むトータルサービスで、現場の変革をご支援していきたい」とした。

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