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ワールドクラスの人事部門を目指す--「Workday HCM」導入のトプコン

阿久津良和 河部恭紀 (編集部)

2022-05-10 07:30

 人事システムを手掛けるWorkdayの日本法人であるワークデイは3月16日、国内企業トプコンが「Workday HCM(ヒューマンキャピタルマネジメント)」の導入を開始したと発表した。従来は紙やスプレッドシートに頼っていた人事業務をデジタル化し、より正確な管理が可能になったとトプコンは評した。同社はWorkday HCMを「フル活用」することで、ワールドクラスの人事部門を目指している。

 トプコンは、「『医・食・住』に関する社会的課題を解決し、豊かな社会づくりに貢献」することを経営理念に掲げ、グローバルに事業を展開。創業は1932年で、旧陸軍の要請で測量機の国産化のために東京光学機械として設立された。戦後に民需転換し、光学技術をベースに事業を多角化、その後は海外技術ベンチャー企業の買収と合併(M&A)を進め、現在では海外売上高比率8割、社員の7割が外国籍のグローバル企業に至った。

 「当社は日本企業の中でも、早期から海外での事業展開に着手してきた。しかし、横串機能の人事部門は海外展開が遅く、人事ポリシーの統一ができておらず、全世界の社員を生かしきれていなかった」と総務法務統括部 人事部 部長 山田和人氏は語る。

 拠点ごとに人事ポリシーが異なるなど、人事部門の視点から見て“One Topcon”になっておらず、社員の間に不公平感が生じていた。また、「日本で開発した製品を輸出して子会社が売る(ビジネス)モデルが通用しない時代。営業部門と開発部門が一丸となって製品開発しなければならなくなり、全世界の組織を横串で見る必要があった」という。

 海外企業を買収しても、「日本の人事制度を輸出できなかった。もう日本古来の人事制度は海外でまったく通用しない。M&Aなどで海外企業を買収後にシナジーをすぐに図ろうと思ったら、シンプルでグルーバルスタンダードな人事制度や人事システムが必要」(山田氏)と、多くの課題を抱えていた同社は2017年8月から人事システムの刷新に着手した。

 当初は国内外のヒューマンリソースマネジメント(HRM)ソリューションを選定候補として俎上(そじょう)に乗せていたが、2018年7月にWorkday HCMの選定に至っている。山田氏は選定理由を「国内の社員だけを考えると、かゆいところに手が届く国内メーカーの方が良い。細かな所まで作り込みができて確かに便利である。しかし、細かな部分に注力することを止めていかないと今のスピードについて行けない」と語った。選定から国内メーカーを外した際は社内やグループ会社からわずかに反発はあったが、社員の公平な処遇をグローバルに実現し、競争力のある人事制度構築のためには必要と説得することで乗り切ったという。

 数あるHRMソリューションからWorkday HCMを選択した理由として、山田氏は「米国子会社が既にWorkdayを導入していた。WorkdayのHR理論はベストプラクティスに基づき構成されているからだ」と説明する。米国事業所在籍時の同氏は、ミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネス教授のDave Ulrich(デイブ・ウルリッチ)氏の人的資源を活用した戦略人事と出会い、「役割としてHRビジネスパートナー(HRBP)、センターオブエクセレンス(CoE)、HRオペレーション(HROPs)、組織開発&人材開発(OD&TD)を組み込みこんでいかなければ、今後、企業が生き残っていくのは難しい」(山田氏)との考えに至ったことが大きい。

 2019年5月から国内展開、続いて10カ国におよぶ海外展開を開始。中国やシンガポールはアジアで1週間、欧州はオランダに関係者が集まり、2週間のトレーニングを実施した。その時の苦労として、総務法務統括部 人事部人事課 課長 矢野敦士氏は「新しいものに触れる難しさは万国共通。ただ、ジョブ型の人事制度を理解している人々にWorkdayはなじみやすかった。日本企業だとジョブ型の人事制度があまりなじまないが、彼・彼女らは当たり前。この土壌があるからスムーズに浸透したのだろう」と振り返る。

 他方で国内はWorkdayを導入するタイミングで社会保険や給与などを連携させたものの、ポジションやチェンジジョブの概念など幾つかの壁を乗り越えなければなかった。矢野氏は「運用時は社員に寄り添い支援に努めている。『困ったことがあったら、いつでも連絡してほしい』と。これを初期段階から用意した。さらに事前にポップなアプローチで『Workdayを導入する』と社内メールマガジンを配信している。目標設定の場合でも、『部屋のドアは開いているのでいつもで来てほしい』という状態で対応し、困りごとに一つずつ対応していく。これらの合わせ技が効いた」と説明する。

 Workday HCMの導入効果についても、「施策がさまざまな意味で進化した。評価を例に取ってみても、全てがデジタルデータになるため、目標の質を瞬時に捉え、不十分な目標や変更すべき部分を一つ一つ確認し、フィードバックができた」と矢野氏。目標の質にアプローチでき、そこにこだわって行動することで制度の定着が進んだという。

 「社員からは目標をどのように立てるべきかを今でも質問される。管理職も部下にどのような目標を持たせるべきかについて課題意識を持つようになった」(矢野氏)

 さらに「経営層も課題を感じた際にデータ分析で切り込めるデータを得られるのは大きい。これまでの業務の在り方であれば、そのようなことに手をつけることはできなかった」と矢野氏は述べる。「例えば、評価にしても『Excel』や紙ベースでは一つ一つ配布して回収するので手一杯だったのが、それらが一瞬で完了し、分析もできる。時間に余力ができたことで新しい課題に取り組めた」(矢野氏)

 今後についてトプコンはジョブ型雇用の企業を目指している。「ジョブ型雇用を支える基盤はほぼ完成しているが、報酬の部分が足りていない」と矢野氏。ジョブコードに基づいた報酬のマーケットデータをExcelで現在入手しているが、それをWorkdayに実装することで、ジョブコードを入力すればマーケットデータが得られるようにしたいと山田氏は説明する。

 矢野氏は、「社員を資格ではなく能力とパフォーマンスで判断できるシステムに拡張したい。ここを成し遂げれば、本当の意味でワールドクラスの人事プラクティスを実現できる」と意気込みを述べつつ、単なる人事評価ではなく、正確な評価と報酬を提供することで、人材を生かしたヒューマンリソースマネジメントを実施する企業が目標だと語った。

 「後はWorkdayをフル活用したい」と矢野氏と述べ、「データの領域でいろいろやっているが、見せるという部分がまだできていない。経営に資せる形でデータをどのように提供するか。着目点を持ってもらう一方で、そこをシステム的にしっかりトラッキングしていく。そのように作っていかなければいけない」と続けた。

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