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国内IT大手の営業利益率、2021年度は10%超に--さらなる構造変革を加速へ

田中克己

2022-05-18 07:00

 国内IT大手8社の2021年度業績は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の需要拡大と企業の合併買収(M&A)などで増収増益だった(表1)。特にNTTデータと野村総合研究所(NRI)の2社が売上高を2桁伸ばしたことで、8社合計の売上高は前年度比8.6%増に、営業利益はNTTデータの50%超増によって、前年度比29.5%と大きく伸びた。高収益ビジネスへのシフトが、8社合計の営業利益率を10%台に引き上げた。NTTデータを除いた7社の営業利益率は11.9%、2022年度は12.1%にもなる。IT大手各社は、営業利益率15~20%を視野に入れた、さらなる構造改革を進めていくことになる。なお、発言は各社の決算説明会によるもの。

表1:国内IT大手8社の2021年度実績と2022年度計画
表1:国内IT大手8社の2021年度実績と2022年度計画

 NTTデータは2025年度に売上高4兆円以上、営業利益率10%超などとする新中期経営計画をスタートさせた。2021年度は売上高2兆5519億円、営業利益2215億円だったので、4年間で売上高を1兆5000億円、営業利益を2000億円弱伸ばす必要がある。増収に大きく貢献するのは、2022年10月のNTTグループの海外事業などを展開する売上高1兆円程度のNTT Limitedとの事業統合だろう。ただし、社長の本間洋氏によれば、海外事業は構造改革中で2022年度の営業利益率は7.2%と前年度から1ポイント強下がることを見込む。

 NRIは2023年4月にも、2030年度に売上高1兆円超、うち海外売上高2500億円超、営業利益20%以上などとするグループビジョン2030を公表する計画。2021年度の実績(売上高6116億円、営業利益1062億円)から、売上高を約4000億円、営業利益を約1000億円、それぞれ積み上げることになる。会長兼社長の此本臣吾氏は「今のビジネスで4割、生産性向上で3割、ビジネスモデルの高収益化で1割、海外の効果で2割」と、増収分の目論見を明かす。加えて、企業をデジタルで変革させるDX2.0から社会全体をデジタルで変革させるDX3.0への広がりを捉えていく。それに伴うコンサルティングビジネスの拡大、ビジネスプラットフォームの深化なども進める。

 同じく8年後に売上高1兆円をイメージするSCSKは、NRI以上の高成長を計画する。この4月1日に社長に就任した當麻隆昭氏は、ITサービス事業からDX支援推進事業へのシフトと、顧客ごとのシステム構築から共通ソリューション提供への構造改革を進めて、営業利益率15%以上の目標に打ち出す。2021年度の実績は、売上高4141億円、営業利益が475億円なので、売上高を6000億円、営業利益を1000億円程度増やすことになる。国内外のM&Aを加速もさせるだろう。

 TISはDXの需要拡大やM&Aなどで、2023年度に売上高5000億円、営業利益率11.6%などとする中計目標数値を2022年度に達成しそうな勢いで成長している。社長の岡本安史氏は「事業ポートフォリオを見直し、成長ドメインへの集中をいっそう進める」と、クレジットSaaSなどのサービス事業とDX支援事業、グローバル事業を強化する方針を説明する。そのための人材投資に力を入れる。例えば、現在300人のDXコンサルタントを500人に増やすなど、2021年度から2023年度の3年間で、構造転換や新サービス創出の人材育成・獲得やM&Aなどに1000億円を投資する。

 2022年4月に社名を日本ユニシスから変更したBIPROGYは、2023年度に営業利益率10%を目標にする。社長の平岡昭良氏は「金融や小売り、公共などのDX関連案件とアウトソーシングビジネスが順調に推移した」とし、2021年後の営業利益率が当初見通しを上回る8.6%を達成したという。アウトソーシングビジネスの企業DX型とサービス型(事業創出)を伸ばすとともに、「デジタルに強いユーザーのアセットを、社会課題の解決につながるサービスとして、実装していく」考え。それを平岡氏は「デジタルコモンズ」と呼ぶ。

 日鉄ソリューションズ(NSSOL)社長の森田宏之氏は「デジタル化のスピードが一層加速している」とし、2021年度から2025年度の5年間に年平均成長率5~6%などとする中期事業方針を改めて説明した。5.5%の成長とすれば、2025年度の売上高は3300億円前後になる。目標達成のカギは、年平均成長率10%以上とするITアウトソーシングとデジタルワークプレイス、プラットフォーマ支援、デジタル製造業の注力領域にある。

 インターネットイニシアティブ(IIJ)社長の勝栄二郎氏は「好調だった」と語り、中期経営計画の1年目(2021年度)に営業利益率10%超を達成した。IPサービスやアウトソーシングサービス、クラウドサービスといった法人ストックが大きく伸びたことで、利益が拡大したことによる。目標の営業利益率7.7%を大きく上回ったことで、2023年度の営業利益率を当初計画の9%超から11.5%に上方修正した。ただし、売上高は2700億円に据え置く。

 各社ともデジタル化の波に乗って業績を伸した1年だった。これからの数年は営業利益率15%超を目指した人月商売からサービス提供などへの構造変革を加速させることになる。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任、2010年1月からフリーのITジャーナリスト。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書は「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)。

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