Microsoftは4月初旬、欧州のクラウドベンダーが指摘する、制約の大きいクラウドのライセンスポリシーについて対処する考えを示していた。Microsoft以外のクラウド環境で同社のソフトウェアを利用する際に支払額が高くなると指摘されていた。同社は米国時間5月18日、プレジデントBrad Smith氏のブログ記事で、対応案を明らかにした。
Microsoftは、5つの「欧州におけるクラウド原則」について説明している。最も重要なポイントは、欧州のクラウドサービス業者が自社のインフラで「Windows」「Windows Server」「SQL Server」「Office」のようなMicrosoftのオンプレミスソフトウェアを実行する際に、公平に競争できるようにすることを目的として予定されている変更点にある。
Microsoftは2019年、アウトソーシングライセンスに関する改定を発表した。Windows Serverやクライアントを実行する専用ホストとして「Amazon Web Services(AWS)」や「Google Cloud」を利用していた顧客が直接的に影響を受けたが、Microsoftとの契約が2022年に更新の時期を迎えるまで、影響の大きさに気付かなかった顧客もいたようだ。MicrosoftがBYOL(ライセンス持ち込み)条件に関する改定を実施したことで、「Azure」以外のクラウドプラットフォームでMicrosoftのソフトウェアを実行したい場合の契約料金が高額になった。Microsoftは、AWSやGoogleのような競合サービスはライセンスや価格設定に関して、いつでも自由に同様の措置を取ることができるとして変更を正当化した。
Smith氏は4月、Microsoftは今後、「もっともだ」と考えられるパートナーの懸念に対応する手段を検討する考えだと述べていた。欧州の独占禁止法当局が、パートナーや顧客の不満の声について調査を開始したことを受け、Microsoftはこの件について検討することに同意した。Bloombergは、新しいライセンスのルールに不満の声を上げていた顧客について報じていた。
Smith氏は18日のブログで、同氏とMicrosoftの上級ビジネスリーダーが、欧州の事業者2社の最高経営責任者(CEO)と会合したことを明らかにした。さまざまな欧州の企業とさらなる会議を実施する予定だとしている。同氏は、欧州のクラウド事業者からの切実なフィードバックを受け、修正するための対応を始めると述べている。
同氏は、Microsoftは今後、欧州のクラウドサービス業者が自社のクラウドインフラでMicrosoftのオンプレミス型ソフトウェアを実行できるように支援するとしている。こうした条件の拡大は、Windows、Office、ビジネス向け「Microsoft 365」アプリなどが対象となる。Microsoftはさらに、「ライセンスが物理的ハードウェアにひも付けられる旧来のソフトウェアライセンス慣行を反映した」ライセンスポリシーを緩和し、仮想環境とクラウド向けのWindows Serverのライセンス供与を「これまでより容易」にするとしている(これは、2019年にライセンス条項の改定が発表された後、Microsoftの競合クラウドから寄せられた主な不満の1つだった)。
「現在、『ソフトウェアアシュアランス』の特典には、WindowsやOffice、Windows Serverのような製品のライセンスモビリティの権利が含まれていない。そのため、顧客は制約がもっと大きいプログラムやこれらの顧客向けの専用のハードウェアでそうしたソフトウェアを利用しなければならない。今後は、ソフトウェアアシュアランスを拡大し、自社のデータセンターでサービスを提供する欧州のどのクラウドサービス業者でも、顧客が自分のライセンスを利用できるようにする。ハードウェアが専用かマルチテナントかに関係なく、現在Azureで利用できるのと同じような使い方だ」(Smith氏)
Smith氏はさらに、より長期間、固定料金で顧客に提供できる製品を拡大する計画であり、「それによって、クラウドサービス業者とその顧客に、価格の安定性と確実性を提供できる」としている。
Microsoftの広報担当者は、18日の発表が及ぼす世界的影響について、以下のように回答した。
「本日の発表は欧州のみを対象とするが、Microsoftの『クラウドソリューションプロバイダー』プログラムと『ソフトウェアアシュアランス』プログラムの改定はグローバルなものだ。今後、今回の発表の詳細と影響について、クラウドパートナーや顧客と直接やりとりしていく」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。