くら寿司、ハマチの養殖をデジタル化--AIが「魚の食欲」解析

大場みのり (編集部)

2022-06-23 17:59

 水産養殖への人工知能(AI)やIoTの活用に取り組むウミトロンは、くら寿司の子会社・KURA おさかなファームと協業し、スマート給餌機「UMITRON CELL(ウミトロンセル)」を活用したハマチの養殖に成功した。ウミトロンが6月23日に発表した。養殖されたハマチは6月24~26日、回転寿司チェーン「くら寿司」の全国店舗で発売される。

「特大切り AIはまち」として220円で販売される
「特大切り AIはまち」として220円で販売される

 UMITRON CELLは、AI・IoTを活用した水産養殖者向けのスマート給餌機。AIが魚の食欲をリアルタイムに画像解析・判定して餌の量やタイミングを最適化したり、スマートフォンなどの端末からいけすで泳ぐ魚をモニタリングして遠隔で餌を与えたりできる。

 漁業では近年、人手不足や不安定な収入、労働環境の厳しさなどが課題となっている。くら寿司は2010年から「漁業創生」をテーマにさまざまな活動をしており、2021年11月に水産専門会社としてKURA おさかなファームを設立。2021年春にUMITRON CELLを導入し、2022年3月には同機器で養殖したマダイを「AI桜鯛」として全国発売した。

 ウミトロンでは、ハマチの稚魚期にUMITRON CELLを用いた生育試験は実施したことがあるものの、成魚まで生育した実績はなかった。2021年6月からKURA おさかなファームおよび養殖委託先の事業者と生育実証試験を実施し、今回の出荷に至った。

 ハマチは一度に多くの餌を食べるため、無駄なく生育に必要な量を与えられるよう、機械を使って一度に短時間で大量の餌を投入し、人が目視で食欲状態を確認する方法が一般的だった。

 今回の実証実験では、UMITRON CELLに切り替えても従来通り生育すると分かったほか、AIが判定した魚の食欲に応じて給餌することで、餌の量を約1割削減できた。また従来は給餌のために毎日船でいけすまで行っていたが、遠隔操作に切り替えることで2~3日に1回の頻度になった。そのほか、労働負担の低減や燃料代の削減にもつながっているという。初出荷となる今回は、約20トンを水揚げした。

UMITRON CELLの利用イメージ
UMITRON CELLの利用イメージ

 実証の結果を踏まえ、ウミトロンとKURA おさかなファームは同機器を愛媛県宇和島市の養殖事業者2社へ提供する契約を締結し、AI・IoTによる委託養殖を本格的に進める。今後も両社はハマチの給餌/生育データを蓄積するとともに、AIの精度を高めることで、ハマチのさらなる生産効率向上・省力化・安定供給を目指す。くら寿司は2024年をめどに、扱うハマチの約3割をKURA おさかなファームによる委託養殖によって賄う計画をしている。

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