エンタープライズトレンドの読み方

フィンテックでフィッシング--その魚は本当にデカイのか?

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2015-10-14 06:30

フィンテックでフィッシング

 我が友がこんな商品を薦めてくれた。その名は「FishyHands」。釣れた魚を巨大に見せる馬鹿馬鹿しい商品。が、虚栄心の固まりである釣り人には、なるほどと思わせる一品だ(持ってることは誰にも言えんけどね)。

FishyHands

 さて、このFishyHandsを紹介しているウェブページ、米国のクラウドファンディングである「Kickstarter」から面白いプロジェクトを日本語で紹介するサイトであった。そう、FishyHandsは、まだ試作品の段階で、商品化へ向けて資金調達中なのだ。調達期間はあと13日を残すのみだが、現時点で調達目標金額のうち、わずか4%しか集まっていない。やっぱ、持っていることが恥ずかしいのが難点か。

 とはいえ、今話題のFintech(フィンテック)は釣り師の世界へも着実に浸透しつつあるのだ。フィンテックでフィッシング。同じサイトでもう一つ釣り師の強力な武器となりそうな一品が紹介されている。

 それは何と水中ドローン「Trident」である。秒速2メートルで水深100メートルまで潜り、魚の様子を捉えることができる。こちらのプロジェクトは大人気で、まだ23日も残っているのに目標5万ドルに対して62万ドルも集めてしまっている。

Trident

フィッシングの罠

 フィンテックのお陰で、釣果も上々、釣り人の虚栄心も大いに満たされるというものだ。ちなみに、釣りという趣味は、脳の中でも最もプリミティブな狩猟本能を刺激する。それ故に中毒性が高く、しばらく行かないと頭の中が魚で一杯になってしまうのだ。

 そして、釣りは、いつしか魚を釣って食べることではなく、魚を釣るという行為そのものが自己目的化する。そのため、極寒だろうが酷暑であろうが、雨が降ろうが風が吹こうが、釣り師は釣りに行ってしまうのである。

 一度釣りに連れて行った友人が、気が付けば自分よりも釣りに行っている姿を見るのは一度や二度のことではない。釣りとは実に恐るべき趣味である。

フィンテックの罠

 さて、そのフィッシングをも支えるフィンテックはどうか。金融はもともと目的ではなく手段である。故にクラウドファンディングは、FishyHandsを商品化するための手段だ。

 しかし、金融も釣りに負けずに、しばしば自己目的化する。例えば、何かのために貯蓄していたはずが、いつの間にかお金を増やすことそのものが目的になってしまったりする。

 釣りの自己目的化はただの釣りバカだが、金融が自己目的化すると、それは不幸の始まりである。故に、金融は人の生活であったり、新しい事業であったり、フィッシングであったりを実現するための手段であることを忘れてはならない。それは、金融にイノベーションをもたらすフィンテックも同様だ。

 その魚、FishyHandsを使ってないか、本当のサイズをよく見極めよう(それにしても、何でこんな商品を紹介するのかな。失礼だろ!)。

飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

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