日立製作所(日立)とハピネスプラネットは、ハピネスプラネットの組織支援サービス「Happiness Planet Gym」を活用し、リモートワークが多い職場においても、メンタルリスクに関わるコミュニケーションを改善できることを実証したという。
ハピネスプラネットは2020年7月、日立などを主要株主として設立された。同社は、個人や組織における「ハピネス」(幸せ、幸福感)の向上を目的に、ソフトウェアサービスを提供している。
コロナ禍でリモートワークが普及した一方、チームや階層をまたいだ「横や斜めのつながり」が希薄になり、従業員エンゲージメントやメンタルヘルスの低下、離職率の増加などが懸念されている。そこで日立とハピネスプラネットは、東京工業大学の三宅美博教授の研究グループと共同で、業種や職種の異なる10組織で働く449人に対し、コミュニケーションや身体運動、落ち込みやうつの兆候に関する調査「CES-D」を行い、落ち込みやうつの兆候を見せる従業員が周囲とどのようにつながっているのかを分析した。
その結果、従業員がコミュニケーションを取る相手の数や頻度は、うつの兆候とは相関が見られない一方、その人がよく話をする相手2人が互いに話さない関係にあると、その従業員は落ち込んだり、うつの兆候が出たりしやすくなることを発見したという。逆に、相手2人がよく話し、コミュニケーションに「三角形のつながり」がある場合は、メンタルが良好な傾向があるとしている。
こうした結果を基に、ハピネスプラネットは「三角形のつながり」を意図的に作り出す「応援団自動生成機能」を開発し、2022年5月から提供しているHappiness Planet Gymの機能として搭載している。同機能は、横や斜めのつながりを含み、交流を通してより良い状態になりそうな人々を3~4人のチームにまとめ、各メンバーは「ハピアドバイザー」の助言のもと、日々の前向きな取り組みを表明して互いに応援のメッセージを送り合う。
「三角形のつながり」生成を図る「応援団自動生成機能」
「ハピアドバイザー」による助言イメージ
今回の実証実験において両社は、約250人を2つのグループに分け、応援団自動生成機能を片方にのみ適用することで、その効果を検証した。まずは両グループとも参加者が自由に応援相手を選んで1カ月間メッセージを送り合い、それぞれのグループにおけるコミュニケーションの構造を確認。その後、一方は同様の応援を、他方は応援団自動生成機能を用いた応援を1カ月間行い、コミュニケーションの構造変化を分析した。
その結果、同様の応援を行ったグループではコミュニケーションの構造に大きな変化がなかった一方、応援団自動生成機能を適用したグループでは、よく話をする相手同士のつながりが希薄だった33%の参加者に「三角形のつながり」が生じたと実証した。この結果から、両社は同機能により社内のコミュニケーションが改善し、従業員のメンタルリスクの低減につながると期待している。両社は今後も、社会におけるウェルビーイング(肉体的、精神的、社会的に満たされている状態)の向上に向けて取り組むとともに、データとテクノロジーを活用して人々の幸せを支えることを目指すという。
応援団自動生成機能による、つながりの変化