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山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

「プログラマー35歳定年説」が残る中国で開発者が生き残る道

山谷剛史

2022-09-30 07:00

 中国ではITエンジニアの退職年齢があまりに早い。俗に言う「プログラマー35歳定年説」があるようで、さまざまな体験談を見るに「その歳でまだ(プログラマーを)やっているのか」という社内チーム内の空気と日本と比べて解雇が容易な環境、若いスタッフに置き換えることで人件費を抑えたい経営の意向により、いや応なく退職に追いやられるケースがよくある。

 また、ゼロコロナ政策によって中国各地で人やモノが動かなくなった結果、経済活動が停滞し、IT企業も影響を受けている。最近はコスト削減や事業撤退というニュースをよく目にするようになった。

 こうした業界の雰囲気や先行きに対する不透明感のため、中年開発者への逆風がますます強まっている。35歳以上のITエンジニアが働き続けることが難しいならば、その再就職もまた難しいわけで、単にスキルが追いつかないだけの問題ではない。

 中国のプログラマーに関する調査結果「2021中国程序員薪資和生活現状調査報告」によると、22~24歳のITエンジニアは11.2%、25~29歳は42.5%、30~34歳は31.8%、そして35歳以上は9.4%と激減する。中国の大手IT企業に就職すれば高収入なので、多くの若者がITエンジニアを目指している。しかし、ずっとその仕事を続けるのは、ITエンジニアになる以上に難しい。

 それでは、ITエンジニアを解雇されたらどうするかというと、それまでに稼ぐだけ稼いで、その資金を元手に投資や起業をするというのが中国での正攻法だ。それができなければゴミ収集員やマンション管理人、配達ドライバー、家政婦などしかないと言われており、インターネットでは「配達員をやってみたら運動にもなって案外楽しかった」という体験記がある。これは、中国のネット論壇で「正能量」と呼ばれるあらゆる事象に対して前向きな解釈を良しとする考え方が流行していることが背景にあるためで、実際に楽しいかというとそうでない人も結構いるだろう。

 先日、百度(バイドゥ)に8年勤務したITエンジニアの李氏(39歳)の動画配信が話題になった。同氏は2021年12月に解雇通知を受け、毎月1万5000元(1元=約20円)の住宅ローンの返済を抱えながらも2022年初頭に退職させられてしまう。そのため、さまざまな方法で生活を切り詰めている様子が描かれている。こうした中年ITエンジニアの悲哀物語はしばしば話題になるものの、アルバイトをするか、投資をするか、起業をするか、といったアドバイスしかこれまでなかった。

 そうした状況に変化の兆しがある。前述の正能量が多少含まれているだろうが、「中年考証熱」という言葉をよく見るようになったのだ。これは、中年世代が仕事を得られるように、さまざまな資格を取得しようという動きだ。

 2022年6月には、中国政府の人的資源・社会保障部が18の新職業を発表した。その半分がITに関連するもので、ロボット工学エンジニア、データセキュリティ技術者、データベース運用管理者、情報システム適応検証者、ビジネスデータアナリスト、農業デジタル化エンジニアなどが挙げられる。ちなみにITと関係ない職業では、民泊管理員、研修旅行指導者、家庭教育指導者、建築エコ化コンサルタント、都市鉄道検査エンジニアなどがある。

 これは、2019年から毎年1~2回の頻度で発表されるもので、過去の発表でも人口知能(AI)訓練士、eスポーツ運営者、ブロックチェーンサービス事業者、バーチャルリアリティーエンジニアなど、IT系の職業が多く含まれていた。中には、認定試験を受ける必要があるものもある。

 そしてまた、2021年夏に中国で「双減」と呼ばれる政策が施行された。これは、学生の勉学負担を軽減するという名目で、学習塾などの一部の学外教育サービスが提供できなくなるというものだ。これにより、未成年を対象にした教育サービスの提供が厳しくなり、多くの教育企業が潰れたが、一部は生き残りをかけて社会人向けのサービスに力を入れた。

 新たな学生は大学で新規に創設される新職業に合わせた学部学科で学び、やる気のある社会人は学生に負けじと生活をかけて教育サービスを受講する。このように中年世代を救う道が現れようとしている。ITエンジニアは30代後半が定年とされて切り捨てられる中、新しい仕事ができることで資格が生まれ、その資格を取得するために努力する人がいて、それを支援する学習環境も出来つつある。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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