日本IBMが顧客について考えていること--先進の半導体、量子、アーキテクチャーに言及

大河原克行

2022-12-14 06:30

 日本IBMは12月13日、ユーザー向けの年次イベント「Think Japan」を都内で開催した。「Leading together in a changing world~より良い社会と未来をともに~」をテーマに、デジタル変革(DX)による新たな価値創造やテクノロジーの未来について論議した。

 イベントのパート1では、「より良い社会と未来をともに」とし、三菱UFJフィナンシャル・グループやダイキン工業が登壇。対談形式で経営観点から取り組みを紹介した。パート2では、「デジタル変革による新たな価値創造」とし、第一生命や北九州市のDX事例などを紹介。また、パート3は「テクノロジーの未来」と題し、米IBM シニアバイスプレジデント IBM ResearchディレクターのDario Gil氏が登壇。IBMが取り組む量子コンピューターや人工知能(AI)などの最新技術について説明した。

日本IBM 代表取締役社長の山口明夫氏
日本IBM 代表取締役社長の山口明夫氏

 基調講演には、代表取締役社長の山口明夫氏が登壇。日本IBMの5つの提供価値などについて説明し、「多くのお客さまが気候変動対策や地政学的リスクへの対応、サイバーセキュリティへの取り組み、人材不足への対応、エネルギー対策などを課題に挙げられる。一方で、クラウド、AI、量子といった新技術の利用や活用に不安もある」としつつ、「あるお客さまは『今は大変な時代だと言われるが、長い人類の歴史から見れば、むしろ、フラット化した世界であったこの30年の方が異常であったともいえる。フラット化した関係が崩れしている今の世界情勢の方が普通であると考え、対応することが大切である』と言われた。これには納得した。前提条件を見直す必要がある。そのためにもテクノロジーが必須となっている」と述べた。

 その上で、「社会インフラであるITシステムの安定稼働」「AIやクラウドなどのテクノロジーを活用したDXをお客さまとともに推進」「CO2(二酸化炭素)やプラスチック削減などのサステナビリティーソリューション」「半導体、量子、AIなにどの先端テクノロジーの研究開発」「AI/IT人材の育成と活躍の場」の5つの領域で日本IBMが価値を提供していることを示した。

 山口氏は、「システムが複雑化し、従来の人手に頼る管理方法では対応できない。そこでデータやAIを活用して障害が発生しないように検知し、障害が発生しても影響を小さくする方法を提供している」と述べる。またサイバー攻撃の標的は、3年前が地方銀行、2021年は製造業の工場、2022年は病院となるなど全ての業種がサイバーセキュリティに対応しなくてはならない時代が訪れているとした。

 「『Watsonはどこに行ったのか』と思う人が多いかもしれないが、今はハードウェアに組み込まれての利用が非常に増えている。Watson活用ソリューションが増え、それが実用化されているのが実態。日本IBMは環境に関するトレーサビリティーを共有できるプラットフォームも開発している」と述べたほか、「これらの取り組みは膨大なデータを高速処理しなくてはならない。そこで量子コンピューターを開発し、日本のお客さまに多く利用してもらえるようにしているが、ここではエネルギー消費量が問題になる。その解決に向けて脳の神経網に似せたニューロ型チップを開発している。さらに、これらを実現して運用するスキルを持つ人も必要。企業や教育機関、地域と連携し育成している。札幌、仙台、北九州、那覇に『IBM地域DXセンター』を開設し、これをさらに広げていき」などと話した。

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