IBMは「メーカー」に回帰するのか、上級幹部に聞いてみた

松岡功

2022-09-21 10:45

 これまで30年かけて「メーカー」から「サービスベンダー」への転換を図ってきたIBMが、ここにきてまたメーカーに回帰するような動きを見せている。果たして、どうなのか。米国本社の上級幹部が来日したのを機に話を聞いた。

Kyndrylの分離でプロダクトメーカーの色合い濃く

写真1:ラウンドテーブルに臨む米IBM シニア・バイスプレジデント グローバルマーケッツ担当のRob Thomas氏
写真1:ラウンドテーブルに臨む米IBM シニア・バイスプレジデント グローバルマーケッツ担当のRob Thomas氏

 話を聞いたのは、米IBM シニア・バイスプレジデント グローバルマーケッツ担当のRob Thomas(ロブ・トーマス)氏。同社のグローバルセールスを統括する責任者で、会長 兼 最高経営責任者(CEO)のArvind Krishna(アービンド・クリシュナ)氏が率いる経営陣のキーパーソンの一人である。このほど来日し、一部報道関係者を対象に東京・箱崎の日本IBM本社でラウンドテーブルを開いた(写真1)。

 Thomas氏は質疑応答に先立つスピーチで、デジタルトランスフォーメーション(DX)の支援に向けたIBMの注力領域について、「Data-driven」「Automate」「Secure」「Modernize」「Transform」といった5つのキーワードを挙げ、「この5つのテクノロジーを活用することが、DXに取り組むお客さまにとって今後の競争力の源泉になっていく。IBMは今、これらのテクノロジーと、それを活用するためのコンサルティングによって、お客さまを支援することに注力している」と強調した(図1)。

図1:DXの支援に向けたIBMの注力領域(出典:日本IBM)
図1:DXの支援に向けたIBMの注力領域(出典:日本IBM)

 また、IBMが現在展開している「Let’s create」というキャッチフレーズを使ったマーケティングキャンペーンについても言及。このキャッチフレーズには「世の中を変える新しい価値を生み出していこう」との意図を込めており、キャンペーンとして「IBMはお客さまやパートナー企業とともに、多様なテクノロジーとアイデアを組み合わせ、それを成果に結びつける新しい方法を開発し、未来のビジネスを共創していく」というメッセージを発信するものだとしている。

 このキャンペーンとそれに伴う活動については、2022年5月19日掲載の本連載記事「IBM CEOが今、『共創』の重要性を強調する思惑とは」でもKrishna CEOの発言を基に紹介し考察しているので、参照していただきたい。

 さて、本題の質疑応答へ。「コンピュータの巨人」と言われたIBMは、かつてハードウェアとソフトウェアのメーカーとして世界を席巻してきた。だが、市場の変化に伴って1990年代初頭にサービス事業の強化を打ち出し、2017年には同事業が売上高比率で3分の2を占めるまでになった。

 しかし、2022年に入り、直近の4〜6月期(IBMでは第2四半期)の事業別の売上高比率を見ると、ソフトウェア事業が40%、ハードウェアに相当するインフラストラクチャー事業が27%、サービスに相当するコンサルティング事業が31%と、メーカーとしての事業が3分の2を占める形になっている。この比率は1〜6月期(IBMでは上期)もほぼ同じだ。

 ただ、こうした比率の変化には大きな理由がある。IBMが2021年11月にマネージドサービスとアウトソーシングをKyndryl(キンドリル)に分離した影響だ。しかし、この動きもIBMが自ら決めたことを考えれば、分離後のIBMはメーカーに回帰しようとしているようにも見て取れる。

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