その後、FAAによる商用ドローン試験用地の承認プロセスを経て、2013年、オレゴン州はアラスカ州と提携することで承認を何とか勝ち取った。現在、この空港はアラスカ大学フェアバンクス校の監督の下、ドローン試験の場を提供している。実際は「Pendleton UAS Range」がすべてのドローン飛行の情報、および事故などの報告義務のあるインシデントについて同大学に報告している。
ドローンが飛べば金が儲かる
連邦の公認を受けてペンドルトンは最先端のドローン研究開発を推進できる立場となり、「お金を印刷するようなものになるだろうと考えていた」とChrisman氏は語った。「ドローンが飛べば金が儲かるという、栄光の時代が来るだろうと」
ようこそ、ドローン試験のホームへ。
提供:Stephanie Condon / ZDNET
しかし、現実にはそうはならなかった。2013年と2014年、RangeでのUAS事業の受け入れは0件。2015年は5件であった。
ドローンビジネスを手がける民間企業が、当時歓迎されていた軍事空域をなかなか離れようとしなかった。
だからといって、Chrisman氏や同氏の編成したチームはドローン試験の受け入れを止めようとはしなかった。彼らは純真な楽天主義で前に進んでいた。その後3年間、チームはいずれやってくると確信していた新しい産業への準備を整えていた。
空港エンジニアのWayne Green氏は、この空港に16の無人機試験環境を設計、製造した。
チームは使われていない1本の滑走路をドローン誘導路に転換し、その周囲にUAS産業パークを建設した。道路、ゲート、その他の基本的なインフラも建設。その際には、連邦安全飲料水法および米商務省経済開発局に基づく資金を活用した。
この試みを始めてから10年が経った今もなお、彼らは建設を続けている。現在は格納庫を工事中だ。これには、大手企業や米陸軍向けの3つのベイで構成された1万8000平方フィート(約1672平方m)の格納庫も含まれている。作業場を建設し、3Dプリンター、レーザー切断機、CNC圧延機といった補助装置、その他、壊れたドローン部品をすぐに交換するために必要となる機材を購入している。
ペンドルトンで建設されているものは他にもある。ホテルチェーンのRadissonは現在、空港直結となる78室のホテルを新たに建設中だ。
最近の工事費用の大部分は、連邦政府特別補助金でまかなわれている。ペンドルトン空港には、米政府の新型コロナウイルス感染症関連の救済法であるCares Actに基づき1680万ドルが給付された。この資金の一部が、ターミナルの再建築やその他の改修作業に充てられている。
ペンドルトン市は、2021年度と2022年度に市予算の600万ドル強をUAS設備改善基金(UAS Capital Improvement Fund)に拠出。2023年にはさらに追加で360万ドルの予算を計上した。これらはすべて、市の一般空港基金に割り当てられた数千万ドルに加算されている。
「これは、成長指向の農村によるかなり大胆な賭けだ。その農村が、航空の未来に身を乗り出して、航空の未来を描こうとしている」(Chrisman氏)
ドローン事業者は空港の管制塔の指示を受けてこの空港からドローンを飛ばすが、公式にはPendleton UAS Rangeが、1万4000平方マイル(約3万6260平方km)の小麦畑、丘陵地帯、高山の山頂地帯、さらには道路、電力線、鉄道などのインフラをカバーしている。Rangeは、最大高度1万5000フィート(約4.6km)の領空の使用権を得ており、その地域の地主に対して上空を飛行するための権利料を支払っている。
Pendleton UAS Rangeがカバーする領域。
提供:Pendleton Airport
Hill氏はRangeの最初のパートナーの1人である。同氏の農場が空港に隣接しているからだ。