松岡功の「今週の明言」

マイクロソフト幹部が説く「生成AIとアプリケーションの関係」

松岡功

2023-10-06 10:21

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、Microsoft エグゼクティブ バイスプレジデント 兼 コマーシャル チーフ マーケティング オフィサーの沼本健氏と、IIJ プロフェッショナルサービス第一本部 コンサルティング部 副部長 プリンシパルコンサルタントの中津智史氏の発言を紹介する。

「生成AIへのユーザーの関心事はアプリケーションの中でどう活用できるかだ」
(Microsoft エグゼクティブ バイスプレジデント 兼 コマーシャル チーフ マーケティング オフィサーの沼本健氏)

Microsoft エグゼクティブ バイスプレジデント 兼 コマーシャル チーフ マーケティング オフィサーの沼本健氏
Microsoft エグゼクティブ バイスプレジデント 兼 コマーシャル チーフ マーケティング オフィサーの沼本健氏

 日本マイクロソフトは先頃、米Microsoftでエグゼクティブ バイスプレジデント(EVP) 兼 コマーシャル チーフ マーケティング オフィサーを務める沼本氏が来日したのを機に、同氏がグローバルでの事業責任を担う企業向けAIの戦略について、東京・品川オフィスで記者説明会を開いた。冒頭の発言はその会見で、同氏がジェネレーティブAI(生成AI)に対するユーザーニーズについての見方を述べたものである。

 会見の内容は関連記事をご覧いただくとして、ここでは冒頭の発言に注目したい。

 「今はAIが新しいプラットフォームになっていく時代の始まりにある」

 沼本氏はこう話を切り出した。これまでのプラットフォームとは、「1980年代のPC、1990年代のウェブ、2000年代のモバイル、2010年代のクラウド」を指すと言う。1980年代から始まるのが同社らしいところだ。

 さて、冒頭の発言だが、その前後も合わせて、沼本氏は生成AIについて次のように語った。

 「生成AIの話になると、とかく大規模言語モデル(LLM)などのAIモデルの話題になりがちだが、実はユーザーからすると、一番の関心事はどのようなケイパビリティーを提供してくれるのかという意味で、ユーザーが保持するデータと生成AIのLLMを掛け合わせて、ユーザーが既に使用しているアプリケーションの中でいかに使いやすく活用できるかにある。従って、私たちベンダーはその点にもっと注力し、ユーザーにその効用をアピールしていかないといけない」

 Microsoftは米国時間9月21日、生成AI機能を備えた「Microsoft Copilot」を発表した。沼本氏によると、「Copilotは当社が幅広い分野に提供しているあらゆるアプリケーションに組み込んでいく形になる」とのことだ(図1)。

図1:幅広い分野に適用されるMicrosoft Copilot(出典:日本マイクロソフトの会見資料)
図1:幅広い分野に適用されるMicrosoft Copilot(出典:日本マイクロソフトの会見資料)

 アプリケーションに組み込んでいく形として分かりやすいのが、「Microsoft 365 Copilot」だ。図2がそのイメージである。

図2:Microsoft 365 Copilotの概要(出典:日本マイクロソフトの会見資料)
図2:Microsoft 365 Copilotの概要(出典:日本マイクロソフトの会見資料)

 Microsoftのこうした生成AI活用の取り組みは、今のところ競合他社に比べて大きく先行しており、沼本氏は「この勢いを今後も維持し拡大していくのが、私の仕事だ」と、さらにスピーディーな事業展開を図っていく構えだ。

 そこで、会見の質疑応答において、「勢いを今後も維持し拡大していく上で一番のポイントは何か」と聞いてみた。すると、同氏は次のように答えた。

 「AIを活用した効果がユーザーの目に分かりやすく見えるのは、さまざまなアプリケーションに組み込まれた機能を使うところから始まる。当社はその点、アプリケーションのアセットが非常に多いので、それらにスピーディーに組み込んで多くのユーザーに効果を実感してもらうことが非常に大事だと考えている」

 まさしく冒頭の発言に帰結した形だ。沼本氏の一貫した姿勢が印象的な会見だった。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. ビジネスアプリケーション

    生成 AI 「Gemini」活用メリット、職種別・役職別のプロンプトも一挙に紹介

  2. セキュリティ

    まずは“交渉術”を磨くこと!情報セキュリティ担当者の使命を果たすための必須事項とは

  3. セキュリティ

    迫るISMS新規格への移行期限--ISO/IEC27001改訂の意味と求められる対応策とは

  4. ビジネスアプリケーション

    急速に進むIT運用におけるAI・生成AIの活用--実態調査から見るユーザー企業の課題と将来展望

  5. セキュリティ

    マンガで分かる「クラウド型WAF」の特徴と仕組み、有効活用するポイントも解説

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]