GitLabの調査では56%の回答者が「新しい開発者の採用時に全てのツールやプロセスを2カ月以内に習得させることができる」と回答しています。なかでも32%が「4週間以内」でした。半数以上が2カ月以内、3分の1は4週間以内ですので、この辺りを目標の目安として定めてみるのもいいかもしれません。
新しいチームメンバーへツールやプロセスを習得させるために必要な期間についての回答
IT業界は人材の流動性が高いので、多くの組織が常に新しい開発者を募集しています。組織にとって難しいのは開発者の採用と定着であり、さらに難しいのが組織のソフトウェア開発プロセスの生産性と効率性を高めることです。
どの組織も開発者の採用や定着に苦戦しています。自組織が開発者を引き付け、雇用し、維持することがどれだけ難しいかを問うと、「とても困難」あるいは「やや困難」が46%で、半数近くが困難を感じていることが分かります。なお「どちらでもない」は29%で、「やや簡単」または「とても簡単」は25%でそう多くありません。
開発者の採用や定着に苦労する組織は少なくない
では実際に開発者の満足度を高めるには何が必要でしょうか。調査では開発、セキュリティ、運用それぞれの担当者に「開発者の満足度を高めるために、自組織のDevOps実践でどのような変化を起こすといいか」という設問を用意しました。
開発者の回答は上位から「コンテキストスイッチの削減」(46%)、「成長と開発機会の増加」(43%)、「情報のアクセスしやすさと発見しやすさ」(42%)、「コラボレーションの向上」(41%)が並びました。
トップの回答に「コンテキストスイッチ」とあります。一般的な用語としては、複数のプロセスで共有されている1つのCPUがある処理の途中で一時的に別の処理に切り替えることを意味します。しかしここではCPUを人間の思考に置き換えて考えます。つまり、「コンテキストスイッチの削減」は、「細かな割り込みの仕事を減らす」ということになります。
開発者にとって、コーディングやアウトプットは集中力を高めて、熟考した上で生み出すものです。思考が途切れると元の状態に戻すのに無駄に時間やエネルギーを費やすことになり、生産性の低下につながりかねません。したがって、開発者の集中力を途切れないようにすることは大切です。
開発者からの回答率が最も高かった「コンテキストスイッチの削減」は、セキュリティと運用だとともにほぼ30%で、開発者の3分の2ほどの回答率でした。開発者が重要視していることが他の職種には伝わっていないのかもしれません。開発者に接する時には、できるだけ思考のコンテキストスイッチが起きないように配慮しましょう。
なお他の選択肢の「成長の開発機会の増加」「情報のアクセスしやすさと発見しやすさ」「コラボレーションの向上」では、どの職種も数%の差異で収まりました。
もちろん開発者にとって何が助けになるかは周囲が推測するのではなく、開発者に直接聞いてみるということが重要です。開発者が回答者の場合、4つの選択肢の回答率がどれもほぼ4割で横並びでしたので、人によりどれを重視しているのか分かれるかもしれません。開発リーダーは面談を通じて、開発メンバーそれぞれに「あなたにとって何が生産性向上に役立ちますか」とじっくり話し合ってみてはいかがでしょうか。同時に組織のソフトウェアデリバリーのメトリクスも追跡・分析し、客観的な視点から検証していくといいでしょう。
- 小澤 正治(おざわ・しょうじ)
- GitLab 日本カントリーマネージャー
- 優れた業績を生みだすセールスチームを構築し、顧客価値を高め市場拡大を実現させるなど、20年以上にわたってテクノロジー企業で経験や知識を生かす。GitLab入社以前は、グーグル、日本オラクル、セールスフォース・ジャパン、アドビなどのグローバルテクノロジー企業で、セールスのオペレーション業務に携わった。