キャディは9月17日、AIを活用した製造業向けの見積もりクラウドサービス「CADDi Quote」の正式提供を開始すると発表した。履歴データをAIが分析して最適な発注先候補を提示する機能などを搭載する。
「CADDi Quote」の概要
CADDi Quoteは、製造部品などの図面データをクラウド上で管理、活用する「CADDi Drawer」と連携し、主な機能として(1)過去の図面や購買データを解析したサプライヤー候補の自動選定、(2)見積もりの依頼・回収・査定・比較の一元的な管理、(3)見積もり業務データの自動蓄積・活用――を備える。これら機能で同社独自のAI技術を活用しているという。
キャディ 執行役員の中原雄一氏
同日開催の発表会に登壇したCADDi Quoteの事業責任者を務める執行役員の中原雄一氏は、現在の製造業で調達や見積もりの業務が大きな課題になっていると指摘した。同社が実施した製造業の実態調査では、今後重要度が増すリスクとして、回答者の72.2%が「調達コストの増大」を挙げ、51.0%が「人手・労働力」としていた。
特に見積もり業務は、製造業の売り上げの大半を占める直接材の原価に関係するため、近年の世界的な物価高や地政学的リスクの高まりなどを背景にした調達コスト増大に対応する上での大きなポイントになるという。しかし、見積もり業務の現場では、今なお紙やファクシミリ、メールといった方法が一般的で属人化もしており、日々の業務が多忙を極めることから改善にも取り組みづらい実態がある。中原氏は、こうした見積もり業務にまつわる課題を解決するためにCADDi Quoteの提供に至ったと説明した。
CADDi Quoteは、2月から先行してベータ版を提供しており、利用企業では導入後約2カ月で見積もり業務の平均60%削減や、導入後3カ月で業務時間の30~40%短縮といった効率化、サプライヤーからの見積もり回答の高速化や新規サプライヤーの発掘といった効果が出ているという。
「CADDi Quote」のデモ。過去データを基にしたAIによる発注先候補の提示
「CADDi Quote」のデモ。各見積もり状況の一覧表示
正式提供後のサービス利用料は、見積もり件数やユーザー数などを基にした個別見積もりになるという。今後は、AI解析技術のさらなる向上や、サプライヤーとのオンラインコミュニケーション機能の追加といった強化を図っていくとする。
キャディ 代表取締役の加藤勇志郎氏
また、発表会では代表取締役の加藤勇志郎氏が、7月に表明した事業構想「製造業AIデータプラッ トフォーム CADDi」などについて改めて説明した。
同社は、7月に金属加工品などの調達・製造を行う「CADDi Manufacturing」を終了する一方、CADDi Manufacturingで培ったデータ分析技術やAI技術などのノウハウを今回のCADDi QuoteやCADDi Drawerに生かし、製造業におけるデータ活用のためのプラットフォームビジネスに注力していく。
加藤氏によれば、中堅・中小顧客での利用拡大のほか、大手自動車部品メーカーと国内外の製造拠点にCADDi Quoteを導入展開するプロジェクトが進行中だという。
新しい事業構想の概念イメージ