CIO・情シス部長が知っておきたい「データクラウド」の基本と構造

第4回:データクラウドの要件整理と導入後の運用戦略を考える

中井祐一 (Snowflake)

2025-03-28 07:00

はじめに

 前回までは、データドリブンな意思決定を実現するためのデータマネジメント基盤の具体的な方法論と導入アプローチについて触れ、このためには単にツールやプラットフォームを導入するだけではなく、明確なデータ戦略の立案、組織体制の構築・文化の醸成という3本柱が不可欠である点について紹介しました。

 本記事では、データクラウド導入検討のプロセスと意思決定をテーマに、検討ステップや要件整理、導入後の運用イメージについて紹介します。

ビジネス課題の明確化とデータ戦略の立案

 データは既にビジネスの中枢となっている一方、「データはあるが活用ができていない」企業が多いのも事実です。データクラウド導入を検討する上で、最も重要なことは「解決したいビジネス課題」を明確化・言語化することです。

 昨今は生成AIの出現などでAIが大きな注目を集めていますが、これらは「データ活用の手段の1つ」であり、まずは「データ戦略」が重要です。必要なデータが利用可能にあることが、生成AIなどの利用には不可欠です。

 現状のビジネス課題を元に、「データ戦略」を構成し、「あるべき姿・ありたい姿」を描くことが重要になります。これが以降のあらゆるタスクを遂行する上での目標、判断基準となります。

要因の明確化

 次のステップはビジネス課題を掘り下げ、その要因と現状とのギャップを明確にし、言語化することです。ここでは、現行の基盤やプロセスに依存した要因に加え、前回の記事で紹介したデータカルチャーの浸透不足など、さまざまな要因が挙げられます。

 基盤に関連する要因の例としては次のようなものがあります。

  • データがサイロ化されており、必要なデータに容易にアクセスできない
  • 基盤のスケーラビリティーやパフォーマンスに課題がある
  • クエリーのパフォーマンスが他の処理の影響を受けやすく、安定しない

 これらは後述する、「基盤を選定するための技術要件」に詳細化されていきます。

アクションプラン

 要因が明確になれば、次は解決策としてのアクションプランを立案することです。アクションプランの中には「文化の醸成」「人材育成」といったソフト面の改善も含まれますが、まずは「基盤」に関連するポイントを挙げてみます。

 アクション(課題解決手段)の1つとして基盤導入や刷新(移行)を選択される場合も多いと思いますが、その際には「要因の明確化」で作成した「基盤を選定するための技術要件」と「優先順位」が重要になります。

 例えば、「データがサイロ化されており、必要なデータに容易にアクセスできない」ことが優先して解決したい課題とすると、

  • 開発・運用コストもかかる、基盤間のデータ移送を発生させない
  • 容易なアクセスを実現しながらも職位や組織の権限に基づいた、きめ細かな権限制御ができる

といったポイントを「要件」として整理していきます。

 一方、「文化の醸成」の側面については、データ提供元からすると、データがビジネスでどのように活用されているかが見えづらいことが要因の1つになっているケースもあります。データを用いた施策の実事例(ユースケース)を元に、各データがどのような価値を持って活用されているかまで掘り下げて共有することも重要です。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]