多様な機能を持つAIエージェントが登場しているが、それらは相互に連携できているのだろうか。組織の内外を問わず、AIエージェント同士を接続する方法を考える時期に来ている。
この課題に対し、組織や業界の壁を越えてオープンかつ相互運用可能な「エージェントのインターネット」(Internet of Agents、IoA)の実現を目指し、そのためのプロトコルと標準を策定するオープンソース団体「AGNTCY」が設立された。
これは、CiscoでAI担当シニアディレクターを務めるTushar Agrawal氏が、Fabrix.AI主催の「Agentic Demo Day」で述べたものである。AGNTCYには、Ciscoをはじめ、LangChain、Galileo、Fabrix.AI、MongoDB、Boomiなどが協力・貢献している。
エージェントの接続性
エージェントの接続性という考え方は、マイクロサービスやサービス指向アーキテクチャー(SOA)の構築・管理を経験した人にはなじみ深いかもしれない。これは、特定の機能が必要になった際に、標準化されたサービスを公開、利用、連携させるという考え方である。
Agrawal氏によれば、この構想の目的は「エージェント群が協力してタスクを遂行できるようにすること」である。「これらのエージェント同士が通信し、互いを理解し、安全かつ低遅延で効率的に連携するにはどうすればよいか。これこそがAGNTCYが取り組み、標準化を進めようとしている課題だ」
同氏は、IoAを「既存のクラウドインターネットの上に構築されるレイヤーだ」と説明する。「インターネットの黎明(れいめい)期に、Internet Protocol(IP)やDomain Name System(DNS)、Border Gateway Protocol(BGP)といった標準化されたプロトコルがあったからこそサービス間の連携が可能になったように、エージェントアプリやエージェント間の連携を実現するためにも、同様のプロトコルと標準を確立する必要があると考えている」
そして、AIエージェント間の連携は、「組織の内外、ドメイン、業種、目的といった垣根をインターネット上でシームレスに越えていくものであり、これこそがわれわれの提唱するエージェントのインターネットアーキテクチャーである」とAgrawal氏は語った。
IoAを支える構成要素
続いて同氏は、AGNTCYが開発を進める、IoAを支える3つの主要な構成要素について説明した。
1つ目は「発見(Discover)」である。Agrawal氏によると、AGNTCYは「OCIオープンコンテナーレジストリフレームワークに基づいたエージェントディレクトリー」を提供するとのこと。「これらのディレクトリーは相互に同期可能で、組織内に複数設置することもできる」。これにより、「エージェントの発行者がエージェントを公開し、利用者がそれらを発見し、実際の保管場所を特定し、依存関係を把握できる、DNSのようなサービス」が実現する。
さらに、AGNTCYは「Open Agentic Schema Framework」というスキーマを提供する。これは、「エージェントの機能を標準的な方法で記述するための枠組みであり、これによりエージェントを発見し、その機能を理解した上で選択、再公開することが可能になる」(同氏)
2つ目は「構成(Compose)」である。エージェントを発見した後、それらを連携させる必要がある。Agrawal氏は、「異なるフレームワークやプラットフォーム上で動作するエージェント群を、どのように連携させ、構成要素をどう定義するのか。どのように展開し、ランタイムはどうなるのか。そして、エージェントが意図した通りに動作し、逸脱していないことをどう保証するのか」といった課題を挙げた。
3つ目は「展開と実行(Deploy&Run)」。ここでは、「エージェントゲートウェイプロトコルやエージェントメッセージングプロトコルなどが役立つ。これらは、多様なエージェントやツール間で情報を共有するための、出版-購読型モデルを実現する。また、MCP(Model Context Protocol、基盤モデルやエージェントがデータ、ツール、プロンプトにアクセスする手段を提供するプロトコル)も提供される」。
これらによって、「非常に安全性の高い出版-購読型のメッセージングバスが実現し、マルチモーダルな情報を含むトラフィックが、多様なフレームワークやエージェント間で、極めて効率的、低遅延、かつ安全に送受信されるようになる」(同氏)
インターネットの発展から得られる教訓は、複数のAIエージェントを連携させてビジネスプロセスを支援する方法を考える上で参考になる。Agrawal氏は、「今日では、ウェブサイトを公開する際に、人々が確実にアクセスできるか心配する必要はない。アドレス変換やルーティングといった処理は、全て標準化された方法で行われる」と述べ、「エージェントの世界でも同様のことが起こると考えている。つまり、開発されたエージェントアプリケーションが、組織内や、さらにはグローバルな範囲で公開され、連携していくようになるだろう」と締めくくった。

提供:Wpadington/Getty Images
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。