「日本はいまだにITをコスト削減の手段にしか使っていない。ところが、ITがビジネスを支援しなければ企業は立ち行かなくなる。バリュー・チェーンを再構成し、新しいビジネス・モデルへと改革していく必要があるのだ」--。独SAPの会長兼CEOであるヘニング・ガガーマン(Henning Kagermann)氏は、こう警笛を鳴らす。
SAPジャパンは7月7日、独SAPの依頼によるEIU(Economist Intelligence Unit)の市場調査結果を報告、日本企業は新規ビジネス・モデルの構築に注力するとの見解を示した。国内の上級管理職188人にアンケートを取った結果、競争力を高める方法として日本企業の62%が、新製品や新サービスではなく、既存の製品やサービスを上手に運営するための新規ビジネス・モデルの構築が必要だと考えている。何を売るかではなく、どのようにして売るかが問われている。
ビジネス・プロセスを再構築する手段として、まずは業種ごとのベスト・プラクティスを採用するという段階があり、この上でSOA(サービス思考アーキテクチャ)という基盤によってビジネス・プロセスを簡単に組み替えられるようにするというのが同社のシナリオである。こうした中、日本企業は、そもそもベスト・プラクティスの採用自体が遅れていると同社は指摘する。
ベスト・プラクティスの重要性についてSAPジャパンの藤井清孝社長は、「日本が手作り主義とパッケージ(やアウトソース)の是非を問う哲学的な議論をしているうちに、他国はみなパッケージを採用して効果を上げた。いつの間にか日本は他国に遅れてしまった。(ITソフトウェアに関する)自前主義こそが企業の収益を圧迫している根源だ」と問題提起した。