「資本提携は必要ない」--NECとUnisysが事業提携、次世代サーバを共同開発

田中好伸(編集部)

2005-10-26 23:21

 NECは10月26日、米Unisysとの事業提携を正式に発表した。両社はサーバ基盤を共同開発する。

 今回の事業提携の柱は(1)サーバ基盤の共同開発、(2)ミドルウェアの相互利用、(3)世界規模でのシステム製品の協業、(4)世界規模での保守サービス協業、(5)システム構築方法論兼ツールの協業--の5つからなる。

「事業提携の交渉は8月に始まった」小林一彦・NEC取締役執行役員専務

 (1)のサーバ基盤の共同開発では、両社が共同でハイエンドサーバ基盤を共同で開発する。共同開発されたハイエンドサーバ基盤(Common Platform)は、NECが製造し、UnisysにOEM(相手先ブランドによる生産)供給する。共同開発でUnisysは研究開発費の削減、NECはハードウェアの売上高増加を狙う。

 Common Platformはインテルベースであり、両社共通のサーバハードウェアとなる。まずは2007年中に32ビットに対応したチップセットと16個までのプロセッサを搭載可能なサーバを開発する。2008年中には、32ビットと64ビットに対応するチップセットと32個までのプロセッサを搭載できるサーバを開発する。

 現在Unisysではメインフレーム「ClearPath」とIAサーバ「ES7000」が主力ハードウェアとなっており、共同開発されたCommon Platformは、ClearPathとES7000の後継機となる。ちなみに、ClearPathは、旧ユニバック系OS(基本ソフト)であるOS2000を搭載する「Doredo」と旧バロース系OSの「MCP」を搭載する「Libra」で構成される。またCommon Platformは、NECのメインフレーム「i-PX9000」、ハイエンドサーバ「NX7700i」、PCサーバ「Express5800」の後継機となる。

 NECの取締役執行役員の小林一彦専務は「Common Platformは、NEC、Unisysのサーバの基盤であり、全く同じハードウェア構成のサーバが出荷されることになる。ただ、NECのi-PX9000の後継機にはACOS-4が、UnisysのES7000の後継機にはWindowsとLinuxが搭載されるといった具合に、それぞれOSを含めたソフトで違いが出てくる」と説明している。

 2004年7〜9月から2005年4〜6月までのハイエンドサーバ市場シェアでは、Unisysが33.1%、NECが6.8%となっている。今回の事業提携でNECは約40%の市場シェアを獲得することになるが、NECでは「更なるシェア拡大を目指す」(小林氏)としている。Common Platformが提供される2007年から2010年まででUnisys向けに約2万2000台のサーバを出荷するとしている。

 (2)のミドルウェアの相互利用では、具体的にどのミドルウェアを相手に提供するかは決まっていない。候補として、NECは「SigmaSystemCenter」や「ClusterPro」、「MCOperations」などを、Unisysは「Supervisor」や「Metering」をそれぞれ挙げている。

 (3)のシステム製品の協業では、両社でフォーカスしている領域に絞ってスタートするとしている。「従来の事業提携では、総花的にやることが多かったが、あまり結果が出ていないからだ」(小林氏)。まずは、指紋読み取りスキャナ製品「H Scanner Unit」、顔認証エンジン「NeoFace」といったNECのセキュリティ関連システム製品を、Unisysのシステム製品に組み込む。Unisysは、これらの製品を主要顧客である政府や空港に販売する方針。

 また、NECが強みとしているSIPサーバやプレゼンスサーバとUnisysが強みとしているメッセージングなどのアプリケーションを組み合わせた製品を、日本を除く世界の通信事業者に販売していくとしている。

 (4)の保守サービスでは、NECが海外でメンテナンスやサポートサービスを提供する際に、可能な限りUnisysのサービス網を利用することを検討する。(5)のシステム構築方法論兼ツールでは、Unisysのシステム構築方法論でありツールでもある「3D Visible Enterprise」(3D-VE)を、NECが活用を検討する。3D-VEは、Unisysが独自に開発したEA(エンタープライズ・アーキテクチャ)開発手法。システムの基盤から、アプリケーション、業務プロセス、企業のビジネスまでを立体的に可視化するというもの。

 小林氏は、今回の事業提携を交渉する中で「資本提携については全くの白紙。予定もない。資本提携をする必要がない」と説明し、資本提携については完全に否定している。

 Unisysは約30%程度出資する日本ユニシスにES7000などのハードウェアを販売しているが、今回の事業提携の交渉には「日本ユニシスは参加していない」(小林氏)。Unisysでは「日本ユニシスとのパートナーシップは今後も続ける」としている。

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