uVALUEとHarmonious Computingの普及を深める重要な1年に--日立製作所

聞き手:田中好伸(編集部)
構成:富永康信(ロビンソン)
撮影:赤司聡 2006年01月01日 02時30分

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グループ全体へ広がる
uVALUEのコンセプト

 最近、日立製作所の情報・通信事業コンセプトuVALUEが、やっと皆様にご理解いただけ始めたという印象を受けています。当社では例年「ITコンベンション」という展示会を開催しておりましたが、昨年は「uVALUEコンベンション」と名称を変え、情報・通信グループ以外でも、オートモーティブや都市開発、さらには電力や交通といったビジネスグループとも共同でソリューション展示を行いました。日立の目指すuVALUEの姿と、“実業×IT”を標榜する企業としての、具体的なメッセージを多くのお客様にご覧いただけたと考えています。

 ユビキタス情報社会の実現に向け、“セキュリティ”や“トレーサビリティ”などのキーワードがますます重要視されています。いつでも、どこでも、誰でも、何でもを実現する時代には、必然的に安心・安全に使えるためのセキュリティが必須です。また、食品の安全確保やサプライチェーンの高度化においても、モノの状況を具体的に把握するトレーサビリティが肝心です。2005年は、これらを用いたさまざまな分野にまたがるソリューションの構築が、日立グループとして実現すべき道であると確信した1年でした。

安全・安心な社会インフラの
高度化が社会的責務

 そのuVALUEは、目に見える形で実社会に利用され始めています。非接触型ICチップの「ミューチップ」は、2005年に開催された愛・地球博で約2000万枚利用されました。読み取りエラー率が極めて低いという実績から、食肉関係のトレーサビリティなどにもミューチップが活用され始めています。また、サーバやストレージ、ネットワークを統合するプラットフォーム「BladeSymphony」、他社のストレージまでも包括的に管理する「SANRISE Universal Storage Platform」なども、その信頼性やコンセプトが高い評価をいただき、uVALUEの具現化のひとつとして実現することができました。

 さらに、カードのスキミングなどの犯罪多発でセキュリティの意識が高まるなか、指静脈を利用したバイオメトリクスやICカードの技術開発、さらには金融ATMのノウハウを組み合わせた、金融機関のセキュリティソリューションも大変高い関心を持たれています。これもuVALUEの典型的な事例といえるでしょう。

日立製作所 情報・通信グループ 最高戦略責任者 山口光雄氏

 また一方で、ビジネスコンティニュイティ(BC)への関心も高まっていますが、事業継続に向けた包括的なコンサルティングから、データセンターのバックアップや従業員の安否確認まで、トータルのサービスがuVALUEのコンセプトで実現されつつあります。電力や新幹線、金融システムなどの社会インフラを作ってきた経験にITを加えることで、より広範囲なサービスが可能になるでしょう。当然、日立グループ単独では不可能な分野が存在するので、関係各社と協力し、より安全・安心な社会インフラの高度化に寄与することを社会的責務と考えています。

総合電機のグループ力と
ITで強力な企業集団へ

 かつてのように大容量、高速、高集積を競うより、セキュアな仕組みの中にエキサイトメントな要素も盛り込み、安心・安全で楽しい暮らしができる社会の構築、それに向けた方向性がかなりの具体性を持ち始めていると感じています。それらをソリューションに仕立て上げるには大変な労力が必要ですが、キーワードはかなりクリアになってきました。

 本当のユビキタスとは、携帯電話やRFID(無線認識)だけではなく、社会インフラも含めて総合的に実現していくものです。“総合電機冬の時代”と言われた時期もありましたが、今は総合電機メーカーである日立の役割は大きいという自信を持っています。当社のように民間でこれほど広い業態を抱え、かつ情報分野も持ちながら運営している会社は、世界でも非常に類稀な存在です。しかもグループ経営となり、日立金属や日立化成などの材料系、日立キャピタルや日立物流などのサービス系を抱えた今、マネジメントの仕組みや方針を工夫して強みに転換していけば、これほど強い企業集団はないと思っています。

 総合力と選択・集中、その両立は常に課題となりますが、それこそが当社にとってのキーワードです。今後は、前面に出る部隊には総合的なノウハウやソリューションを揃える一方で、それを支えるコンポーネントやソリューションなどを提供する部隊では、徹底的に強化、他企業と連携、マイノリティに留める、あるいは撤退を判断するといった、選択と集中を進めていくことになるでしょう。

異業種ベンチャーとの協業は
別次元のスピード感

 この10年で日立の意思決定は非常に早くなりました。お客様やパートナーが次々と変わり行く激しさは、社員全員が身に沁みており、以前の大企業病はかなり消滅したと感じています。それに、これまで大企業が中心だったお客様やパートナーも、今後は中・小規模の企業やベンチャーが増えていくことが予想されます。

 2004年に韓国のゲームメーカーHanbitsoftと合弁で、ハンビットユビキタスエンターテインメント(HUE)を設立しましたが、彼らのスピード感は別次元のものです。HUEのビジネスはオンラインゲームですが、データセンター的アウトソーシングビジネスに近く、従来のビジネスモデルとは相当異なります。

 また、経営の意思決定や投資のメカニズムについても、臨機応変に投資できる社内のファンドの確立や、M&Aも経営手法に含まれるため、それに対応するチームをグループ内に構築しているところです。

創立100年の節目と
次の100年へのビジョン

 当社にとって2005年という年は、ミューチップや指静脈認証技術、シンクライアント端末の販売と社内配布など、話題性を作ってきた1年だったと言えます。そして2006年は、それらが本格的に実践され、確実に盛り上がると見ています。2002年末に、サービスプラットフォームコンセプトであるHarmonious Computingの概念を打ち出して以来、BladeSymphonyなどの具体的なソリューションが広く認知され始め、その基本構想が多くのお客様にご理解いただける段階に来ました。

 そのような意味で、2006年はuVALUEおよびHarmonious Computingの普及を深める重要な1年になるといえます。また、2010年が日立製作所の創立100年に当たる年でもあり、その年に向けてのビジョンを次の100年を念頭に置きながら全事業部が策定しているところです。

 そして今、当社では全体の売り上げの3割を占める海外のビジネスを、なるべく早い時期に5割へ引き上げようとしています。お客様も急速にグローバル化しており、その際の着実なコンサルテーションとプログラムマネジメントの双方を、グローバル対応でサポートできる体制の構築が必要です。

 私も2005年は頻繁に海外へ出向きましたが、世界が急速にグローバル化するのを目の当たりにし、国内だけで仕事をしていればいい時代はとうに過ぎたことを痛感しました。今後は外国人幹部の登用を含め、ドメスティック中心のこれまでのやり方を変えていきたいと思っています。そのためには、グローバル化の先兵として行動し、一人でも多くそのような行動や考えができる社員を増やすことが、2005年に引き続いての私の目標であり、そしてこれからの夢でもあります。


山口光雄(やまぐち みつお)
日立製作所 情報・通信グループ 最高戦略責任者
2005年は、これまでにも増して意識的に海外へ赴いた年だった。その数は30回近くにも及び、月2回のペースで世界を飛び回る行動力とタフネスさは若手社員も舌を巻く。しかし本人にとって、海外のさまざまな企業や異業種の人々に会うことこそが生きがい。彼らとの会話からさまざまなヒントが得られたという。グローバリゼーションの古典「レクサスとオリーブの木」を著したトマス・フリードマンの近著「The World Is Flat: A Brief History Of The Twenty-first Century」に感銘を受け、今年のモットーはずばり「The World Is Flat」。だが、世界を知るほどに、日本の本当のグローバル化は遠いと感じている

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