ビジネスとITを融合するBPMとは--「BPM+SOA」で企業改革を! - (page 4)

佐々木政和(日本BEAシステムズ)

2007-02-23 08:08

BPMとSOA

 BPMS製品は、SOA(サービス指向アーキテクチャ)でアプリケーションを構築する企業にとっても有益な機能を提供してくれます。SOAは、既存のIT資産を最大限に活用しながら新しいビジネスの変化に対応できる俊敏で柔軟なITシステム構築のためのアーキテクチャです。

 SOAの視点でBPMを定義すると、BPMは、SOAで実装されたビジネスサービスを予め定義されたプロセスに基づいて組み立てながらアプリケーションを構築するためのプロセス管理ツールと言えます。

 また、既存のアプリケーションソフトウェアから業務の流れに関する部分を取り出し、残りのビジネスロジックを中心にBPMのプロセスと連携することで既存ソフトウェア資産を再利用することができ、BPMの導入コストを最小限にすることができます。

図3 プロセスライフサイクル(BPM)とサービスライフサイクル(SOA)。

 BPMとSOAは、それぞれアプローチは異なりますが、目的はほぼ同じで「企業改革」、すなわち、業績の最大化と継続的な発展を目指しています。BPMは「企業改革」を実践するための業務プロセスのマネージメント手法であり、SOAはITシステム構築の設計手法です。

 BPMを導入した企業のほとんどは、コスト削減、業務期間の短縮、顧客満足度の向上、法令順守対応の効果などを挙げています。BPMのITシステムとしてSOAをベースに構築されたビジネスサービスが利用されており、BPM+SOAで企業の投資対効果(ROI)を増大することができます。

BPMの今後

 このように、BPMはこれまで無かった新しい概念では無く、これまで、個々の組織、部門で行われた「業務改善」、あるいはIT化に向けた「システム開発プロジェクト」を全社的に共有化し、全社の経営陣、現場担当者、IT開発エンジニア、運用担当者を総動員して改善のループを形成しようというアプローチです。

 BPMは、単に「業務プロセスを自動化」するだけでなく、むしろ企業改革、経営改革、システム改革など企業活動に必要な「改善」を経営層および現場全体を巻き込み社員全員でアイディアを出し合いながら作り上げる「企業規律」であり、「企業活動の最大化を図るための考え方であり改善の手法」と言えます。

 業務プロセスの可視化(見える化)を実現することで、文字通り「オープンな企業体質」を作り出すことができます。

 BPMは、米国において、業務プロセスを最適化するためのトップダウン型経営手法として発展して来ました。それに、日本企業の特質である現場の自主性を重んじた柔軟性や拡張性を加えることにより、企業の社員全員が、企業規律として業務プロセスの継続的な改善サイクルに参加することが可能になり、骨太でかつ俊敏な企業を創り出すことができます。

 今後、BPMへの取り組みや効果は、業種あるいは業務別のプロセステンプレートの横展開というより、むしろ企業毎の経営層(特に社長)の方針、風土、制度、組織、社員などの違いにより、それぞれ企業毎に異なって進化していくと思われます。

 会社から与えられた「決まりとしての業務プロセス」に留まれば、単に現場担当者に課せられた範囲内で機械的な作業に終始することになり、これまで以上の上から管理強化につながります。しかし、「社員全員の改善提案が埋め込まれた業務プロセス」を構築できれば企業業績の向上のみならず社員のチームワークやモチベーションも高まるでしょう。

 また、現場で業務の手順やコンテンツを決めることもできるので企業システムにおけるWeb 2.0的な新たなビジネスモデルとしての発展もあるかもしれません。BPMを介して新たなビジネスモデルを見つけ出す企業も登場するかもしれません。BPMの今後の動向に注目すると同時にBPM活用の新たな可能性にも期待したいと思います。

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