注目を集める新興企業に加えて大手ソフトウェアパッケージベンダーの参入も続くSaaS市場。「ソフトウェア」業界の進路を左右するこの市場の動向についてQ&A形式で紹介する。
--「サービスとしての」ソフトウェア(Software as a Service:SaaS)って、何のこと?
分からないのは君だけじゃないよ。ここで話そうとしているのは、ブラウザからアクセスする「ソフトウェア」(他に適当な言葉がないので)を使うことだ。このモデルについて、「オンデマンド」とか「ホスト型」とか、いろいろな呼び方を聞いたことがあるかもしれない。こう呼ばれるのは、ソフトウェアはサービスを提供する企業によってホストされていて、ユーザーのPCにインストールされているわけでも、オフィス内に存在するわけでもないからだ。つまり、ブラウザを起動してログインすることになる。理論的には、インストール不要、手間いらず、管理の間接費が不要、ということになっている。
--実際、理論どおりになっているの?
おおむねそうだと言えるけど、ユーザーがインストールする必要のあるソフトウェアCDが詰まったパッケージをまだ出荷し続けている有名な大企業と比べれば、この分野で評価が確立されている企業はまだかなり少ない。
--「おおむね」ってことは、まだ何か問題があるの?
何にでも問題は付き物さ。でも、SaaS(Software as a Service)市場のベンダーは、社内用のソリューションを利用するより少ない問題しかないと言うだろう。ただし、ダウンタイムなどの問題はあるけど。ただ常識として、コンピュータは故障するものであって、SaaSベンダーに言わせれば、ベンダーでのアップタイムは、ユーザーのサーバとコンピュータを使う場合のアップタイムとはレベルが違うほど高いということだ。それに加えて、セキュリティについての心配もある。重要なデータを社外に置くことをユーザーが本当に望むだろうか。繰り返しになるけど、SaaSベンダーは自社のユーザーに、自前のセキュリティは、ユーザーが所有するどんなものより優れていると説明するだろう。これは、1つのビジネスだけを対象にするのではなく、数千社の顧客とベンダーとしての評判を守るというスケールメリットがあるためだ。
ただし社内用ソフトウェアのベンダーは、データの扱いに慎重な姿勢を取る企業にSaaSは簡単に広まらないと主張していて、その判断はおそらく正しいだろう。少なくとも、しばらくの間はそうだろう。
ホストされているソリューションを最大限に活用したいなら、オンラインになっている必要があることをお忘れなく。今では、どこからでもインターネットにアクセスできるけど、その中身を軽視してはいけない。システムの性能は接続状態と同じレベルになるため、インターネットアクセスが止まるのに悩まされている企業や、従業員がインターネットアクセスのチャネルを複数利用していつでもオンラインでいられる機能を確保するのに時間がかかっている企業は苦労するかもしれない。
--では、どんな種類のソフトウェアがあるの?
今までこの分野で新しいやり方が多く取り入れられたのは、カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM:顧客関係管理)や、エンタープライズリソースプランニング(ERP:企業リソース計画)などのビジネスアプリケーションで・・・