業務のすべてがノウハウに--社内でWikiを利用するヤフー - (page 2)

林信行

2007-04-18 08:00

 その中で、最大かつ最も先進的な事例を作っているのがヤフーだ。同社では現在、本社及びグループ会社の派遣社員を含む全社員が、毎日Wikiを利用している。そのユーザ規模は3000人強だ。

 ヤフー システム統括部開発部の阪田浩隆氏は「ヤフーに入社したら、すぐに『コンフルを使いなさい』といわれる。そのかわり、退職したり、産休などで一時的でも離職する場合は、セキュリティ上、翌日にはアカウントが使えなくなる」と話す。

 「コンフル」とは、AtlassianのEnterprise Wiki製品Confluenceのことだ。ヤフーでは、一般職の社員で「Wiki」という言葉は知らなくても、「コンフル」という愛称なら知っている。

 同社 情報セキュリティ本部 情報システム構築部の羽生純也氏は、「ヤフーでは、2002年〜2003年頃に、エンジニアがチーム単位で知識共有のために立ち上げたWikiが登場し始めていた」という。

 その後システム統括部では、これを「PukiWiki」というオープンソースWikiを使ってまとめ始める。技術系のWikiはもちろん、部署単位のWikiなども用意し始め、日々の業務に欠かせないほど情報が貯まり始めた。Confluenceの導入が始まったのは2006年前半だ。

 「(Wikiは)技術情報の共有はもちろん、社内に入ってきた人達がまず何をすればいいのかや、部署ごとの情報から雑談まで、すべてを共有するのに使われている」と阪田氏は言う。また、広報部の菊池玲恵氏も、「非技術系では、法務部、広報部など、会社全般の問題に取り組む必要がある部署や、そうしたノウハウの蓄積が重要な部署から導入が進んだように思える」と付け加える。

Yahooシステム統括部開発部の阪田浩隆氏と情報セキュリティ本部情報システム構築部の羽生純也氏

 PukiWikiを利用していた時代には、Wikiのサーバが乱立し、探している情報が見つけられないことも多かった。また、運用期間が長く、蓄積情報量が膨大になったことで、表示に時間がかかるページも増えてきた。そこでシステム統括部は、これを企業向けにWiki製品で置き換え、統合的に管理することになった。システム統括部で必要な条件を検討し、製品を探したところ、Confluenceが要件に最もマッチしていることがわかり、2006年1月に試験導入、6月から本格導入を始めたという。

 ヤフーがあげた導入条件の1つは、ACL(アクセス制御リスト)への対応だ。Confluenceは、標準ではないものの、ACLを実現する機能が用意されている。これを利用して、誰がどの情報を読み書きできるかACLで管理する。

 書き込んだ情報は、同じ組織内で共有することが基本設定になっているが、必要に応じて公開範囲を広げたり、狭めたりもできる。ACLによって、チーム内だけで温めたい企画や、これまで書きづらかった情報、決算に関する情報など、社内といえども共有できない情報がWikiで扱えるようになった。中には、書き込んだ本人しかアクセスできない非公開型のWikiを作り、個人用のメモ帳やスケジュール帳代わりに使っている人もいるという。

 第2の条件は、オープンソースであることだ。ヤフーの社内システムでは、シングルサインオンを実現するため特殊な認証システムを使っており、これを組み込む必要があったのだ。

 Confluenceは有料の企業向け製品でありながら、そのソースコードが公開されている。このため、企業ごとの細かなニーズに合わせた改良がしやすく、「使わせたくない機能を削ることもできた」と阪田氏は言う。

 統合的に管理することも導入目的の1つだが、システム統括部 企画部リーダーの石井勉氏は、「これまでのPukiWikiの情報をすべて取り込んでいるわけではない」と話す。「PukiWikiで書かれた情報すべてを移行するのが目的ではない。PukiWiki上の蓄積は膨大で、すべてを移すのは大変。とりあえず日々の業務で必要なものから順次Confluenceに移行する形をとっている」(石井氏)

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