オープンな標準作りへの積極参加で、日本IT産業は再生を図るべき--The Open Group

田中好伸(編集部)

2007-10-09 08:00

“標準”の重要性

 ITの世界では、いたるところで“標準化”が重要なポイントになっている。特に企業の情報システムでは、標準となっているソフトを活用することが欠かせなくなっているし、システム構築という局面でもドキュメントの標準化が求められるとともに、標準化された方法論が求められている。

 しかし、標準化という作業は、影響する範囲が大きければ大きいほど、またその影響を被る人間の数が大きければ大きいほど、標準化作業にかかわるコストは膨大なものにならざるを得ない。

 市場での競争の結果として勝ち残ったものを事実上の標準“デファクトスタンダード”とするやり方では、負けた側の技術や製品を使ったユーザーは結局買い直しをさせられるし、使われなくなったメーカーの集積した開発コストや技術は、社会的には全く効率を無視したことになり、社会資源の無駄遣いにもなり、さらに集約度が高ければ独占的な市場規制としても問題になる。

 そこで、国や国連の国際標準化を図る公的な機関で、違反に対しての社会的・法的な規制がつけられる標準“デジュールスタンダード”が理論的には最適だが、まず自国の標準を他国に押し付けたのでは通らない。また国連機関となると、小国、大国のエゴがぶつかり合って時間がかかり、これでは10年戦争になってしまう。いま注目されているのは、任意の国際団体で、グローバルにビジネスをしている企業が中心となり、IT・IPの標準を作る有力団体が専門別にいくつもできあがっていることだ。

 ここにきて、オープンに標準を作ろうという官民学が合意してつくる民間標準団体のコンセンサスベースのスタンダード作りが表舞台に出てきている。そのトップが「The Open Group」言えるだろう。

 The Open Groupは、他の標準団体などと協調しながらオープン標準と認証のリーダー役をこなし、徐々に影響力を発揮してきた。

 NPOであるThe Open Groupは、ボードメンバーにユーザー企業とベンダー企業を持ち、デジュール型でありながら、コンセンサスベースで、1件10カ月以下で標準を完成させるファーストトラックの仕組みを持ち、それが誰でも簡単に、無償または低コストの認証料で活用できる“オープンスタンダード”の方式をとっている。

 過去にさまざまな苦労を重ねながらも、多くのオープン標準化作業を積み重ねてきたThe Open Groupの日本代表・会長を務める藤枝純教氏(グローバル情報社会研究所=ReGISの代表取締役社長兼CEO)は、「日本は自己流を世界に押しつけるのではなく、オープンな国際標準化作業にもっと積極的に参加すれば、それに合せて作る日本のIT技術や能力は、まだまだ中国やインドなどに負けることはないだろうし、中国やインドに指導する立場をとることで頑張れば、日本のIT・通信は世界のトップグループに入り、世界に貢献できる」と技術者のみならず経営者にもエールを送っている。

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