その平鍋氏が特に狙っているマーケットは米国だ。あくまで日本を拠点にしながら、売り上げではソフト先進国である米国を中心とした海外比率を高めるというのが平鍋氏の目標である。
「私の将来ビジョンは二つあります。まず拠点が日本ということは変えたくないし、本社は東京、開発の主体は福井という今の形も変えたくありません。優秀なエンジニアはどこにでもいるので、こうした人たちが集まる会社にしたいのです。そしてもう一つは、その日本の会社が世界に向けて日本のオリジナリティを発信するということです。製品が世界標準になっていて、売り上げも海外の方が多いという形にしたいと思っています」
JUDEやTRICHORDによって、ソフト開発の生産性も品質も向上する。平鍋氏の得意分野であるアジャイル開発を実践することができる。しかし、もともとの開発のきっかけはもっと深いところにあるようだ。
「ソフトウェアの開発というのはもともと楽しいものなのに、現場では日本のソフトエンジニアは疲弊しているのですね。そこで、どうしたら楽しく仕事ができるかと考え、こうしたツールを開発したのです」
現在のソフト開発の現場には3Kという言葉がついてまわる。特に、仕様書通りのソフトを納期に間に合わせて開発する受託開発の現場は、そのKが6つも7つも連なるという人もいる。
それに対し、平鍋氏が提唱するのは「3Kから3Tへ」である。たとえばこのKを「きつい」、「帰れない」、「給料が安い」というなら、KをTにして「楽しい」、「定時に帰る」、「高い給料」に変えるというものだ。
「これが僕の最近のテーマです。そのためには田舎というと変ですが、日本の働きやすい環境で働き、市場は海外に求めるというのがいいのではと思っています」
チェンジビジョンと平鍋氏が、ソフトウェア開発の現場だけでなく日本のソフトウェア産業のあり方も変えてしまうかも知れない。