今後3年間で企業ユーザーは仮想化とクラウドコンピューティング、そしてウェブ指向アーキテクチャといった技術に注目すべきである――。ITアドバイザリー企業のガートナー ジャパンは、こうした提言を明らかにしている。
同社は、今後3年間の中長期戦略を見据えて企業ユーザーが“大きな影響”を受ける可能性を持つ技術を「戦略的テクノロジ」と定義している。ここで言う大きな影響とは、たとえばITやビジネスに革新的変化をもたらすものや大規模な投資を要するもの、また導入しなければビジネス上のリスクが拡大するもの――などが含まれる。同社がこのほど明らかにした、2009年に注目すべき10の戦略的テクノロジは以下の通りだ。
(1)仮想化
(2)クラウドコンピューティング
(3)サーバ(ブレードを越えたもの)
(4)ウェブ指向アーキテクチャ(Web Oriented Architecture:WOA)
(5)エンタープライズ・マッシュアップ
(6)特化型システム
(7)ソーシャルソフトウェアとソーシャルネットワーキング
(8)ユニファイドコミュニケーション
(9)ビジネスインテリジェンス(BI)
(10)グリーンIT
仮想化の波はストレージ、クライアントにも
(1)の仮想化はすでに企業ユーザーにとって、サーバの仮想化という技術に次第に違和感を覚えることなく取り組みを始めていることから、特段目新しいというわけではないだろう。しかし、ガートナーが仮想化を注目すべき戦略的テクノロジとしているのは、サーバに加えてストレージ、クライアントデバイスの仮想化が急速に進んでいるからだ。
仮想化によって実際のストレージデバイスの複製をなくして、ファイルがオリジナルの場所に格納されているような状態でシステムがアクセスできる環境を提供することで、ストレージデバイスや情報を格納する媒体のコストを大幅に削減できる可能性がある。
一方のクライアントデバイスの仮想化では、ホスト型仮想デスクトップが注目される。これは、ブレードをベースにしたPCに相当する環境を提供することになるが、PCのマザーボードの機能がハードウェアとしてデータセンターに実装される代わりに、実体のない仮想的なマシンの“バブル(泡)”として実装されることになる。ただ、ガートナーとしては、数多くの企業がシステムの仮想化プランに意欲的であるものの、2010年までにホスト型仮想デスクトップ機能を利用する割合は40%に満たないと見ている。
柔軟で拡張性のあるクラウド
(2)のクラウドコンピューティングはすでに多くのベンダー企業からさまざまなモデルが提供されつつあるが、ガートナーでは、クラウドコンピューティングについて、プロバイダーが幅広いIT対応機能を消費者へ提供するモデルとして特徴付けられるコンピューティング形式の一つとしている。同社ではその特徴を<1>各種機能を“サービス”として提供、<2>拡張性と柔軟性に優れた環境でサービスを提供、<3>インターネット技術と手法を利用してサービスを開発・提供、<4>外部顧客への提供を念頭に置いたデザイン――と四つにしている。
クラウドコンピューティングは小規模な企業にとって潜在的なコスト面でのメリットをもたらすことになるが、このコンピューティング形式の最大のメリットは、クラウドコンピューティングが本来持ち合わせている柔軟性と拡張性で、導入のハードルが低くなるだけでなく、迅速な成長も可能になると同社では説明している。