投資対効果だけが重要なのではない。人は、共通の関心事があれば意味のある会話ができるものだが、直接だと意見を言わない人も多い。これが、ブログだとどんどん出てくるのだ。「誰でも自分の意見を簡単に発信でき、組織や階層を越えてコメントできるのがいい」とSero氏は言う。
Oracleでは、過去3年間に40社を超える企業買収を実施しており、当然ながら研究開発チームにも新たに加わる人がいる。彼らは、いち早くOracleのカルチャーに溶け込まなければならない。面と向かってのコミュニケーションだけではお互いを知るために時間がかかっても、各人が情報を発信することで誰が何を考え、何に興味を持っているかがわかり、組織も階層も超えたコラボレーションができる。そうすれば、溶け込むのも早いとSero氏は分析している。特に、最近の若いエンジニアはこのようなコミュニケーション手法に慣れているので、効果は高い。こうした目に見えないメリットも重要だとSero氏は指摘する。
自社の成功事例を元に製品化へ
この研究開発センターでの取り組みが、「Oracle Social Suite」という製品になりつつある。シングルサインオンの機能を搭載し、何千ものブログやコミュニティを企業ポリシーに沿って効率的に運用できる製品だ。「Oracle Database」や「Oracle Fusion Middleware」などのテクノロジ基盤の上に、ソーシャルコラボレーションのさまざまな機能が載る構造となっており、ブログのサーバ機能部分にはSix Apartの「Movable Type」を利用する。評価の高い既存製品は積極的に取り込み、Oracle技術を用いてエンタープライズ利用に耐えうるよう拡張しているのだ。
また、同製品にはタグ付けによるセマンテックサーチ(意味検索)を実現し、検索を柔軟にしてリコメンドする機能もある。さらに、タグからコンテンツの意味を解析して意味ネットワークを作成し、そこから該当情報を発信している人を「興味」でひも付けする。これで、キーワード検索だけでなく、自分と同じ興味を持つ人をネットワークから見つけることができるのだ。また、メンバー間の興味の関連性をグラフ化する機能もある。
「社員を引きつけるものが必要だ。そのためには参加意識が重要であり、それがあってこそ新しいアイデアが生まれる」とSero氏。ブログやWikiの活用、そしてリコメンドや人現関係のビジュアル化といった方法は、従来の検索で欲しい情報を探すというワークスタイルとはまるで違う、参加意識の高い「仕事環境」を生み出す。ここには、新たなアイデアを生み出す大きな可能性が秘められているのだろう。