上記の問題に対処するため、次に規格化された「SCSI-3」では、ある変更が加えられた。SCSI-1/2では、コンピュータと周辺機器間でやり取りする情報である「コマンド(SCSIコマンド)」と、その伝送路である「トランスポート」が一括で規格化されていた。これに対してSCSI-3では両者を分離し、コマンドに関する規格とトランスポートに関する規格が、個別に提供されるようになった(詳細はhttp://www.t10.org/scsi-3.htmを参照)。
これに伴って、SCSI-3ではシリアル伝送方式がサポートされ(パラレル伝送方式も引き続きサポートされている)、かつ多様なトランスポート技術に柔軟に対応できるようになった。さらに、トランスポートプロトコルが変わってもSCSIコマンドはそのままで使用し続けることができる。SCSI-3でのトランスポートプロトコルとして代表的なものは、「ファイバチャネル(Fibre Channel:FC)」や「SAS(Serial Attached SCSI)」、「iSCSI(Internet SCSI)」などである(図1)。
もう一つ見逃せない点が、コンピュータとストレージの間に“ネットワーク”が登場したということであり、このネットワークこそがSANである(図2)。SCSI-3とそのトランスポートプロトコルとしてのFCなどの登場により、SCSI-1/2規格では困難だった“ストレージデバイスの共有”が可能となった。高価なディスクやテープライブラリを複数のコンピュータ間で共有できるようになり、ストレージの利用効率が格段に高まっていった。
これまで紹介してきた内容のまとめとして、SANについては下記の3点を理解しておいていただきたい。
- SANはコンピュータとストレージの間に存在する“ネットワーク”である
- SANにはさまざまなトランスポートプロトコルが存在するが、その上位ではSCSIコマンドがやりとりされる
- SANは“デバイスの共有”を目的としている
(後編は2月3日に掲載予定です)