プロジェクトの進め方が変わる「工事進行基準」に備える(後編) - (page 2)

木村忠昭(アドライト)

2009-02-06 08:00

原価総額の見積もり方法を標準化

 次にポイントの2つ目である工事原価総額、つまりそのプロジェクトの原価予算がいくらかかるのかということを信頼性をもって見積もる必要がある。基準によると、プロジェクトごとに実行予算を策定して適切な承認を受けること、当初見積っていた原価総額が変更した場合、見積もりの変更を適時に反映させる体制が求められている。

 実務上のポイントとしては、各プロジェクトでの見積もりの精度を一定以上に保つため、すべてのプロジェクトにつき工事原価総額の見積もり方法を標準化する必要がある。たとえば、プロジェクト原価を費目別、工程別に作業内容を細かくブレークダウンしていって、それらを積み上げて原価予算を設定していく方法を社内でマニュアル化するなどの方法により、工事原価総額の信頼性を担保する必要がある。また、工事原価総額の見積もりが変更になる場合にも、社内で見積もり変更のためのワークフローを確立しておき、適切な承認と履歴を残しておく必要がある。

原価比例法とEVM

 最後に、決算日におけるプロジェクトの進捗度を信頼性をもって見積もる必要がある。実務上は、「原価比例法」という方法を採用して進捗度を見積っている会社が多い。原価比例法とは、分母に見積もり原価総額、分子に現在までの原価実績の積み上げ金額を代入し進捗度を見積もる方法をいう。この原価比例法が、最もシンプルで客観性に長けた見積もりの方法であるが、それ以外の合理的な方法によっても、進捗度の見積もりを行うことができる。

 他の具体的な方法には、工数の時間の割合で進捗度を見積もる方法、費用ではなくアウトプットの観点から進捗度を見積もる「Earned Value Management(EVM)」と呼ばれる方法もあり、会社にとって実態を反映する方法により、進捗度を求めることになる。このように見積った決算日における工事進捗度を、工事収益総額に乗じることによって、決算日における工事収益を算定するのである。

 以上3つのポイントが、進行基準を適用するにあたり、信頼性の高い見積もりが必要となる要件である。次回は、工事進行基準の財務会計上の側面と管理会計上の側面にスポットを当て、導入する際の留意点を紹介したい。

木村氏
筆者紹介

木村忠昭(KIMURA Tadaaki)
株式会社アドライト代表取締役社長/公認会計士
東京大学大学院経済学研究科にて経営学(管理会計)を専攻し、修士号を取得。大学院卒業後、大手監査法人に入社し、株式公開支援業務・法定監査業務を担当する。
2008年、株式会社アドライトを創業。管理・会計・財務面での企業研修プログラムの提供をはじめとする経営コンサルティングなどを展開している。

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