商船三井--総合海運企業が目指したグローバルポータル構築の条件とは? - (page 3)

富永康信(ロビンソン)

2009-03-13 16:38

各国現地法人への周知徹底に腐心

 運用開始から1年を経た現在、MIPは国内のグループ会社が利用していたウェブポータルを取り込み、国内50社、海外100社で約1万人が利用する巨大なポータルとして運用されている。

 従来は、コンプライアンスや利用規程に関する通達をメールで配信しても、紛失や未見などでなかなか徹底しなかったり、個別に寄せられる問い合わせに対して資料や情報をそのつど送らなければならなかったりしたが、MIP開設後は該当の資料を納めたライブラリへのリンクを案内する方法に変えたことで、連絡事項の周知度合いや、管理部門の作業効率が大幅に向上したという。また、海上社員を対象に、国内だけで毎回1000部ほど配布していた通達の書類やCD-ROMなども大幅に削減された。

 清友氏は、「日本人で海外に転勤している社員ほど、日本の情報をいつも欲しがっている。本社と同じ情報に触れられるようになったことで、距離が近くなったと感じてくれているようだ」とMIP導入による効果を評価する。

 また、内部統制の業務プロセスを導入している定期航路部門では、コンテナの在庫指数や回転率といった効率運用に向けたマネジメント指標などが多数あるが、その掲示場所としてもMIPが利用されている。

 しかし、カットオーバー直後から全世界で一斉に活発な利用が開始されたわけではない。当初は各国の現地法人を含む全グループ企業にこのポータルの存在自体を周知徹底することから始める必要があった。

 高木氏は、「本社にある現地法人の担当部門から、現地法人側のキーマンを通じて新ポータルの開始を伝え、段階的に時間をかけて周知していきました」と語る。国内では、MIP利用に向けたトレーニングを開催したり、メールマガジンや社内報でポータルの利用法の解説をしたりするなど、利用率をさらに上げていくための努力を今も続けているという。

国と組織を超えたシナジー効果

 従来の連絡事項はメールを使って配信することが通例だったため、ポータルから情報を入手するという習慣がないことも、グローバルポータルの活発な利用を阻む原因のひとつとなっていた。

 「今後は、スケジューラーに施設予約を組み込む形で導入する予定。これにより、ポータルを利用する習慣はさらに会社に根付くようになるだろう」と清友氏は言う。

 また、高木氏は「グループ会社を含めた合同プロジェクトでもMIPを利用してもらうことを検討している」という。世界中の拠点間で情報交換するグローバルアカウントでは、これまでLotus Notesデータベースのシンクロで情報共有していたのだが、それをMIPで集約してしまうことも可能だと述べる。例えば、鉄鋼原料船の部門などは本社とイギリスに別々に存在している。今後は、より拠点間での情報共有が容易になったMIPを起点に、新たな共同プロジェクトを進めることもできるのではないかと言う。

 「顧客サービスや業務効率向上に関するノウハウを共有することで、組織の壁を超えたシナジー効果が期待できると思われる」(高木氏)

 中期経営計画の締めくくりとなる来年度に向け、商船三井ではこのMIPをきっかけとして国内外のグループ総合力を高め、海運事業での世界最高水準のサービス品質を目指したいとする。

うなばら ポータルを構築した後の課題は、ユーザーにその存在を知ってもらい、実際に使ってもらうこと。社内報にポータルの使い方をわかりやすく解説した記事を載せる(写真)など、さまざまな方法で浸透を図っている。

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