「BPR」の遺伝子を受け継いだ「BPM」
ところで、こうしたBPMの考え方は、どのようにして生まれてきたのだろうか。その背景を探ってみると、「ビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)」というキーワードに行き着く。
BPRは1990年代後半に流行した言葉だ。専門化し、縦割りになってしまっている企業の組織や業務をビジネスプロセスという観点から見直し、抜本的に改革することで、飛躍的に業績を向上させようとする活動を意味する。すでに「ビジネスプロセス」という考え方も取り入れられており、「改善」の意識も高かったようだ。
しかし、このBPRはいつの間にか立ち消えになっていく。仕事の流れを可視化することによって、それまで見過ごされていた「ムダ」を見つけ出し、組織や業務を改革するということは、裏を返せば、経営者にとって「ムダ」と判断される人材や組織自体を「削減」しやすくなるということでもある。こうして「BPR=人減らしの手段」という誤ったイメージが定着してしまったことが、BPR自体が下火となった最大の要因のようだ。
さらに、もう1つの要因として、BPRが「一過性の活動」に留まってしまったということも挙げられる。というのもBPRでは、ビジネスプロセスの現状を分析して、より良い方向に改善し、実施するという流れが一巡したところで「プロジェクト終了」となるケースが多かったからだ。
こうした経緯を踏まえ、「ビジネスプロセス」や「改善」といったBPRの発想は活かしながら、改善に「継続的」というアイデアを加えたのがBPMの考え方である。以前から製造現場などで行われてきた「QC活動(Quality Control Activities)」では基本となっている「PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクル」を継続して回していくという要素を加味したわけだ。
例として挙げた3つのBPMの定義を読み直してみても分かるが、いずれにおいても「継続性」が強調されているのは、BPRでの挫折があったからなのである。
ITシステムとBPMの深い関係
誤解を恐れずにBPMを一言で表現するならば、「経営改革」を目指した全社的な取り組みと言えるのではないだろうか。そして、その取り組みは、今や企業経営と切っても切り離せない関係にある「情報技術」、すなわち「IT」にも影響を及ぼす。さらにITには、BPMのサイクルを回していく基盤としての役割も求められることになる。
とかく、現行のITシステムに対する企業での評価は低くなる傾向がある。業務でITシステムを利用している社員たちは、システムがもたらしている恩恵よりも、使う上での不満にばかり目が行きがちになる。自分の会社のシステムは、現実の業務に合っておらず、使い勝手も悪い上、業務効率の向上にも貢献していないと漏らしたりする。経営陣にもこうした傾向はあり、巨額のITコストに見合った効果が上がっているのかを常に疑心暗鬼し、新しいビジネスアイデアが上がってきたときに、魔法のようなスピードでITが対応することが当然だと考えている。一方、ITシステムの供給サイドである情報システム部門は、社員や経営陣の意見はきちんと聞いたはずだと憤り、ITシステムをトラブルなく動かす運用管理に追われている……。
先が見えない経済状況の中で、それぞれの役割をもった人々が、それぞれに厳しい立場で、必死に会社を動かしている。そんな立場の違いから生まれるそれぞれの不満も、BPMのアプローチを導入することで、改善できることを期待されているのである。
次回以降は、経営や業務、そしてITシステムのそれぞれの立場での改善に役立つ、BPMの特長やメリットを考えていくことにしよう。