「積立」というアイディアもそうですし、ボランティア参加や不妊治療への利用など、プライベートとして扱われがちな項目にも使える休暇を用意するところに富士通の懐の広さを感じます。そして、多くの企業で育児休職は、「配偶者と交代で取る」という条件を設けていますが、富士通では妻が育児可能な場合に夫が取得することも認められています。積立休暇をまとめて取ると、土日を含め約1カ月近くの休みになるので「夫婦2人でどっぷり育児」の期間を設けることも可能なわけですね。
また、「配偶者の出産休暇」という休暇制度もあります。これはもともと「妻の出産休暇」と呼ばれていたもので、名前のごとく「妻の出産前後に、夫が付き添いなどのためお休みを取る」というものです。出産に立ち会いたい人や、里帰りに付き添う人などそれぞれのニーズに答える形で、産前産後であれば5日間の休暇を自由に取れることになっています。2007年度に「配偶者の出産休暇」を取得した社員は700名程度ということです
制度を支える企業文化と「FUJITSU Way」
富士通と言えば、社員3万人近くを抱え、日本を代表する大手メーカー企業ということもあって、福利厚生を始めとするさまざまな制度は従来から存在し充実していたようです。例えば社員用の託児所も、川崎に2001年から設置されています。
今回特徴的だと感じたのは、ダイバーシティへの取り組みだけでなく、従来から存在していた制度を、時代ごとに柔軟性を持って再検討する富士通の姿勢です。産休や育児に関するものも、女性側だけに偏ったものではなく男女それぞれの立場からの時代のニーズを反映させていると感じました。ダイバーシティ推進室設立の際も、まずは全社員に向けてアンケートとグループインタビューを実施し、社員が何を課題と感じているのかをヒアリングしたそうです。
富士通では、社員1人ひとりが「FUJITSU Way(富士通グループの理念・指針)」を記した名刺大のカードを持っていますが、FUJITSU Wayの「大切にします」という項目の中に「社員の多様性を尊重し成長を支援します」とあります。FUJITSU Wayは2008年4月に改定され、その際に「多様性」という言葉が加わったそうです。
塩野室長は「ダイバーシティへの取り組みを通して、社員1人ひとりの個性を生かしてもらいたいですね。会社側からすれば、社員に力を発揮してもらい、その中で会社として新たな知恵と技術を創造して提供できれば、という思いでいます」と語っていました。
それでは、また次回! あなたの会社のユニークな制度やあったらいいな! が実現したよという取り組みなども、ぜひ教えてくださいね。
「あったらいいな」を実現する企業:ファイル2 | |
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社名 | 富士通 |
事業内容 | 通信システム、情報処理システムおよび電子デバイスの製造・販売ならびにこれらに関するサービスの提供 |
設立 | 1935年6月 |
従業員数 | 単独: 2万6351人 (2008年9月20日現在) |
資本金 | 3246億2507万5685円 (2008年8月末現在) |
海外事務所 | ワシントン、ニューヨーク、欧州(ロンドン)、ハワイ、コロンビア |