サイボウズのワーク・ライフ・バランス支援制度の特徴は、以下の通りです。
- 妊娠判明時から取得可能な産前産後休暇
- 最長6年間(小学校就学時まで)休業可能な育児休暇。復職後の給与条件は休職前と同じ
- 育児短時間勤務――妊娠判明時から両親共に適用可能。勤務時間や勤務日は、会社と相談して決める。給与は時給制、賞与は勤務時間に応じて支給。期間は無制限
- 子供の看護休暇。日数は特に定めない
上記以外にも、家族への要介護を条件とする場合も、育児支援と同様に最長6年の休業や短時間勤務の制度を設けています。また、「定年制」も廃止しています。
「男性も女性も、価値観や生活スタイルが多様化しているので、両者にとって働きやすい環境を目指していますが、やはりまだ女性のほうが選択に迫られるケースが多い。結婚や出産などの人生の期に、止む無く仕事を辞めるという選択をしなくても済むように、長期間の育児休暇や短時間勤務制度を設けています。会社にとっては、時間をかけても、人材である社員が戻って来ない方がリスクなんです」と山田本部長は話します。
さらにサイボウズでは2007年に、従来の成果型と年功型を並立させ、社員が選べる「選択性の報酬制度」を導入しました。その報酬制度とは、「ワーク重視」(PS制度)と「ライフ重視」(DS制度)のどちらかの報酬制度を年に一度、社員が自ら選択するというもの。ワーク重視は、時間や場所などの枠に捉われず、報酬型でがっちり仕事をしたい人のためのもので、ライフ重視は、家庭や習い事などのライフとワークのバランスを考慮して、労働時間や日数を設定して働きたい人のためのものです。この制度の適用期限に制限はなく、賞与は全社員同一の算定式を適用します。
この「PS」と「DS」という呼称に、「アレ?」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。この呼び名、PSは「プレイステーション」で、DSは「ニンテンドーDS」の略から来ているそうです。遊び心のある呼び名ですが、実は「PSもDSも、どちらが上であるとか、どちらが良いという評価ではなく、人それぞれが好みで選ぶもの。それと同じように働き方も好きな方を選んでください」というメッセージが込められているそうです。現在では、育児、健康面、自己啓発などの理由で、社員13名がライフ重視の「DS型」を選択しているとのことです。
報酬制度を選択性にした理由についてお聞きしたところ、「誰でも20年間全く同じペースで仕事をし続けることはなかなかできません。がんがん働きたい時期もあれば、疲れてペースを落としたい時期もある。プライベートな時間を削っても仕事を早く覚えたい時もあれば、家族との時間や習い事などの時間を優先させたい時期もある。その時の必要に応じて、柔軟に対応できる体制を会社側が準備していることが大切なんだと思います。育児休暇も選択性報酬も、あるからといって皆がむやみに選ぶかと言うとそうではない。いざとなっても大丈夫という安心感を持って働いてもらうことが意味のあることだと思っています」と、山田本部長は説明します。
ヒントは大企業の人事制度だった
サイボウズの創業を振り返ると、松下電工(現 パナソニック電工)で出会ったコンピュータ好きが「簡単で便利なグループウェアを作ろう」ということから立ち上げたという経緯があります。現社長の青野氏も創設メンバーの1人で松下電工の出身者。そして、山田本部長には大手銀行での在職経験があります。