山田本部長は「大企業の人事制度を見てきて、以前はそれをまねしたいとは思わなかった。しかし、松下電工もトヨタも最初はベンチャーから始まり、継続して成長し続けてた結果、大企業になった。サイボウズもただ力任せに突き進んできたが、上場企業となり、これから100年続く会社にしようと思った時に、改めて成功してきた大企業の人事制度の中に『長く働くヒント』があるのではないかと考えたんです」と語ります。
山田本部長は銀行時代、仕事が限られていて残業もない「一般職」と、転勤もサービス残業もありの「総合職」の在り方や、年功重視の給与体系などに違和感を持っていたと言います。「一般職が女性で、総合職が男性となっていたことや、昔作った制度のいびつなところが残っていたことが問題であって、制度が時代と合わなくなっていた」と考え、年齢や性別の分け隔てを取り払った選択性へのアイデアにたどり着いたと言います。
新制度を導入するにあたって、運用面での問題はなかったのでしょうか。
「マネージャーの運用には大変な部分があります。しかし、これまで俗に言う『帰りたいのに帰れない雰囲気』や『疲労して病気になってしまう』といった体制の中で、社員を働かせるだけではなく、お互いがハッピーになる環境が必要なんです。そのためには、その体制でしっかり部下を管理して仕事を回すのがマネージャーの役務だと思っています」と語ります。
こうした制度を円滑に運用する上で、「ひとりひとりの勤務形態が違う中で、助け合いの精神のようなものが自然発生的に出て、スムーズに業務を進めてもらうためには、普段からのコミュニケーションが不可欠」と山田本部長。現社長が松下電工時代に見て来た運動会や盆踊りといった社員同士の交流の場が、ここでも参考になっているそうです。
コミュニケーションを図るために
仕事以外の楽しいイベントの中で、コミュニケーションを図ることは重要です。そのコミュニケーションを実現する際、「サイボウズ風にするとどうなるだろう?」と山田本部長は考えました。その答えは、部活動に力を入れることでした。
サイボウズでは、5人以上の社員が集まれば、どんなクラブでも結成可能となっています。結成されたクラブにて、半年に3回以上の活動実績があり、その活動内容を社内のブログにアップしていれば、半年で1人あたり5000円の補助金が支給されるのです。
現在サイボウズには、野球部、フットサル部、テニス部などといった一般的なクラブの他に、カート部や遠足部、部員が集まって黙々と対戦する(ニンテンドー)DS部、みんなで映画を観に行く映画部、社内外の清掃をする掃除部などといったユニークな部活が20組ほどあるそうです。その中でも人気なのは映画部(62名)と掃除部(53名)で、こういった和気あいあいとしたフランクな活動の中から社内恋愛に発展することがとても多いとのこと。これまでに21組のカップルが社内結婚しているそうです。なんだかとても微笑ましいですね。
最後に山田本部長は「成長し続ける会社にしたい。そのためには人材ありきですから、社員に長くいてもらいたい。この会社としての考え方は変わらないが、これからもその時代やニーズを見極めて人事制度を見直すつもりです。ギスギスした中で生み出されるものは長くは続かない。『お互いに働いているメンバーが好きだ』という雰囲気の中で、皆で成長し、黙っていても皆が自主的に働く、そんな職場を目指しています」と語っていました。
それでは、今回はこの辺で! あなたの会社のユニークな制度についての情報も、ぜひお寄せくださいね。
「あったらいいな」を実現する企業:ファイル10 | |
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社名 | サイボウズ |
事業内容 | グループウェアを始めとするソフトウェア開発と販売、情報通信、情報提供に関するサービスの提供 |
設立 | 1997年8月 |
従業員数 | 266名(2009年4月現在。役員、派遣含む) |
資本金 | 5億6900万円(2009年1月末時点) |