製品ライフサイクル管理(PLM)大手のシーメンスPLMソフトウェア(シーメンスPLM)は7月23日、同社の会長兼最高経営責任者(CEO)であるTony Affuso氏と製品担当エグゼクティブ・バイスプレジデント兼最高技術責任者(CTO)のChuck Grindstaff氏の来日に伴い、同社のビジョンと今後の戦略、最新の製品動向を紹介するプレス向けの説明会を開催した。
シーメンスPLMの親会社となるSiemens AGは、世界のトップ25社に位置するグローバル企業で、2008年度の売上高は約10兆円、従業員は42万7000人を数える。同社は、エネルギー事業部、産業オートメーション事業部、ヘルスケア事業部の大きく3つの部門で事業を展開。シーメンスPLMは年間5兆円を売り上げる最大の部門、産業オートメーション事業部に所属している。
業界では長年、“イノベーションのSiemens”として知られており、申請された特許は5万500種類に上る。2008年には研究開発費として5070億円を投資しており、3万2300人が研究開発を担っている。「この研究開発に対する投資と成果は、シーメンスPLM(旧UGS PLM)の顧客にとっても非常に価値のあることだ」とAffuso氏は話す。
同氏が話す通り、SiemensとUGS PLMの統合は非常に順調に進んでおり、2008年に実施された顧客満足度調査では、40%以上の顧客が「(両社の統合により)ロイヤルティがさらに高まった」と答えているという。Affuso氏は「この調査結果は、シーメンスPLMが顧客に対する支援をより一層強化していくためのイノベーションにさらに投資を拡大していくことの証し」と話している。
こうした取り組みが評価され、現在までに全世界で5万6000社以上がシーメンスPLMの製品を導入している。Affuso氏はその1社である大手自動車メーカーのVolkswagen Interactiveの例を紹介。同社は、PLMソフトの導入にあたり4社の製品を比較検討した結果、シーメンスPLMの製品を導入している。Affuso氏は、「ほかの3社は過去にVolkswagenに導入実績があったにもかかわらず、今回すべての検討項目でシーメンスPLMが評価された」と話している。
Affuso氏はまた、市場調査会社のIHS Global Insightが2008年1月以降調査している国内総生産(GDP)の推移を紹介。この調査では、地球規模での景気の後退は顕著だが、2009年1月には回復に向かうと予測されていた。しかし現実には、4月まで引き続き景気は後退し、5月、6月にようやく横ばいという状況が報告されている。
Affuso氏は、「ここで強調したいのは、景気が後退している現在だからこそ、われわれはユーザー企業のPLMにおける、より一層の効率化と生産性向上のための支援ができるということだ。これこそがシーメンスPLMが掲げるビジョンやパッションであり、われわれが提供する製品群で具現化される」と話している。
顧客のニーズを的確に捉えた最適な製品を提供
Affuso氏に続き登場したGrindstaff氏は、CAD/CAM/CAEアプリケーションを提供するデジタル製品開発ソフトウェア「NX」、デジタルマニュファクチャリングアプリケーション「Tecnomatix」、デジタルライフサイクル管理ソリューションポートフォリオ「Teamcenter」、中堅・中小企業向けのモジュール型PLM統合ソリューション「Velocity Series」で構成されるPLM製品群の最新動向についてデモを交えて紹介した。
Grindstaff氏は、「景気が後退していることは紛れもない事実であり、この状況下でビジネスを加速していくためには大きく2つの取り組みが必要。まず顧客のニーズを的確に捉えた最適な製品を提供すること。もうひとつが最適な製品を使用して適切なシステムを構築し、効率化と生産性向上を実現することだ。さらにその価値を持続可能にしなければならない」と話す。
同氏はまた、「製品群は、顧客に対して、適切なタイミング、機能、性能、スタイル、価格で提供しなければならない。しかも(Affusoが話した通り)製品提供には、ビジョンやパッションも必要になる。また、顧客のモノ作りの工程において、高い可用性、信頼性、品質、持続可能性を実現しながらコストを低減するための支援も不可欠になる」と話す。
シーメンスPLMではそのための取り組みとして、「デジタルデザインオートメーション」「ナレッジマネージメント」「総合的に多分野をサポートできる仕組みの提供」「デジタルコラボレーションバックボーン」「IT分野での持続可能性」――という5つの基本要素で実現されるデジタルエンタープライズを提唱している。