国内での商取引全般を円滑にするための会社法、そして政府や地方自治体が税収を獲得するための税法という法律が要請するために、日本国内の企業は単体決算では日本基準のまま。そして証券取引所に上場する企業は、金融のグローバル化に伴って、全世界で比較しやすいようにIFRSでの連結財務諸表を報告する――という仕組みとなる。こうした状況から、森川氏は「つまりIFRSは“二重帳簿”が前提。“公用語”にはなり得るが、“母国語”にはなり得ない」と表現している。
「IFRSを巡る日本国内の現在の議論としては、連結の財務諸表はIFRSに“アドプション(適用)”していくが、企業単体は、時間をかけてIFRSにコンバージェンスしていくという流れです」
このように当面は、連結はIFRSで単体は日本基準と、異なる会計基準が並存した状況が続くことになるとしている。そうした状況下で、多くの企業が新しい投資をするのか、作業負担に耐えられるのか、を考えると、制度会計と管理会計をそれぞれ個別に運営するのが現実解というのが同社の見方だ。こうした見方の帰結として、同社は企業グループの親会社向けソリューション(Global Consolidation Accounting:GCA)としてDivaSystemを中核にしている。その具体策の第一歩が、最新版の9.3になるわけである。
同社の中期的対応のもう一つが、連結経営ソリューションの拡充だ。これは、企業グループ経営で業務が広がっているという事態がある。たとえば、財務や会計の各種数値をグループ全社で共有して、事業の方向性をより早く決定するといった要望が高まっている。また、グループ企業から単に財務や会計の各種数値だけでなく、中期経営計画や事業計画などの非財務情報も含めて管理連結業務を展開したいという要望も出るようになっている。
そうした企業グループ経営で業務が広がっているという事態に対して同社は、経営情報活用ソリューション(Global Management Intelligence:GMI)とグループ会社向けソリューション(Global Group Management:GGM)という2つを展開する考えだ。GMIは、経営情報を活用する、つまり一般的にはビジネスインテリジェンス(BI)ツールを想定したものだ。これについて同社は、他社製のBIツールとDivaSystemを連携することを想定している。もう一つのGGMは、グローバルの経営管理に貢献できる業務アプリケーションをグループ企業に対しても提供するソフトウェア基盤製品を用意するというものだ。たとえば、グループ全体で連結会計情報を開示、共有するといったものを想定している。
こうした中期的対応から、2010年6月期の事業方針を説明する。GCAの分野では、発表されたDivaSystemのコンバージェンス版だ。GMIの分野では、他社製BIツールを活用したソリューションの開発と企業経営の管理を高度化したいというユーザー企業への営業展開を挙げている。また、GGM分野では、オープンソースソフトウェア(OSS)を活用したソフトウェア基盤を整備、グループ全社で使えるような業務アプリケーションの開発を進めるとしている。