「やる気」は5段式ロケットで打ち上がる?--モチベーション理論を勉強してみる - (page 3)

梅田正隆(ロビンソン)

2009-10-01 18:28

何が人間の行動を引き起こすのか

 これまで紹介した理論が、モチベーションに関して非常によく知られたものだが、これ以外にも次のような理論がある。

 欲求理論においては、Maslowの欲求階層理論の問題点を修正したClayton P. Alderferの「ERG理論」がある。Maslowの欲求階層理論では、低次から高次へと段階的に欲求が出現するとしたが、この説に従えば、例えば「成功するために寝食を忘れ勉強に打ち込む」といった行動を説明できない。

 そこでAlderferは、欲求の次元を「Existence(生存)」「Relatedness(関係)」「Growth(成長)」の3つに区分し、欲求階層理論に修正を施した。

Alderferの「ERG理論」のモデルイメージ Alderferの「ERG理論」のモデルイメージ

 Alderferは、それぞれの欲求は同時に活性化することがあり、高次の欲求が満たされないときは低次の欲求が強まり、低次の欲求が満たされると、その重要度は弱まって、より上位の欲求の重要度が強まると説明した。この理論は実証実験により、経験的に支持されている。

 欲求理論とは異なり、John Stacey Adamsらは、人は誰かとの比較において不公平感を認知したときに、それを解消しようとして発揮される強い行動力の源泉が、人間のモチベーションであると考えた。これが「公平理論(Equity Theory)」である。

 公平理論においては、不公平の解消が、良い方向にも悪い方向にも向かうことが考えられる。自分より働かない者と自分の報酬が同じであるとき、不公平を解消するために比較した人よりも働かなくなる可能性がある。経営者から見ると「逆モチベーション」だ。

 Tosi & Hamnerらは、学習心理モデルを援用した「強化理論(Reinforcement Theory) 」を提案した。人は行動を起こすことで報酬を受け取れると分かっているとき、さらに報酬を得ようとして行動を起こす。ある行動を褒められると、再度褒められるように行動する。このように、強化理論では行動が何かによって強化されると、その行動の発現に意欲的になると考えたのである。この理論の応用としては「鼻先に人参をぶら下げる」といったところだろうか。

「期待」できれば「やる気」も起きる

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