問われる「経営力」--変化にあわせて進化する企業統治の“真髄”

森川徹治(ディーバ) 2009年08月26日 08時00分

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子会社と関連会社の違い

 「連結経営」の対象となるグループ企業は、3つの種類の会社によって構成される。親会社と子会社、そして関連会社である。

 親会社は、グループ企業を主体的に統治する権利をもつ会社である。子会社と関連会社は、ともに親会社を中心とした企業グループに属する。子会社は親会社が実質的“統治権”を保有するが、関連会社は経営的には自立もしくは、ほかに親会社が存在している点で大きく異なる。

 統治権とは、一般に“経営権”と呼ばれるものであり、経営権は商法・会社法により、支配持ち株数に応じて保証されている。一般的には、株主総会の通常決議事項を決定できる過半数の議決権を保有するグループ会社が、子会社と呼ばれる。

 一方、関連会社に対しては、経営権を持たない以上、大株主としての影響力は持つが、親ではない。よって企業統治(コーポレートガバナンス)の対象外である。しかしグループとして損益インパクトが無視できない場合、その損益のみ連結決算の対象として取り込む。

連結経営に専門特化した純粋持ち株会社

 親会社のあり方も大きく2つに大別することができる。純粋持ち株会社と事業持ち株会社である。

 グループ企業に対するガバナンス自体を本業とするのが純粋持ち株会社である。だが、戦前の日本の財閥企業がこの形態で運営され、軍需産業との関わりも大きかったことから、経済力を特定の企業に集中させないとする戦後占領政策を色濃く反映して制定された独禁法により、1997年まで禁止されていた。解禁後は連結財務諸表中心の会計制度の導入や、事業環境の変化へ対応するための経営統合が増えるに従い、純粋持ち株会社の数も増加の一途を辿っている。

 純粋持ち株会社は、連結経営に専門特化したコーポレートガバナンスの機能と言える。よって、純粋持ち株会社設立のメリットは、異なる企業同士の経営統合やM&Aのハードルを下げることにあるとする技術的側面もあるが、本質的には連結経営専門の機関を設け、グループ企業全体の事業資産配分の最適化を推進することにある。

 事業持ち株会社が、自ら営む事業をもって企業グループの盟主となり、グループ企業に対するガバナンスを機能させるのと異なり、純粋持ち株会社はその性格上、資本の理論と経済合理性を優先とする判断にドライブがかかる。よって、事業持ち株会社から純粋持ち株会社への移行に際しては、純粋持ち株会社の役割をより厳密に規定し、かつ十分な牽制機能を設けることが求められる。十分な備えを行った上での純粋持ち株会社への移行でないと、目に見えるキャッシュフロー(C/F)を軸とした経済合理性に判断が偏りすぎて、利害関係者(ステークホルダー)全体の利害バランスを崩すリスクを抱えることになる。

どちらがいいかは言い切れない

 全体最適を推進するという観点では、純粋持ち株会社の運用は十分な備えを行うという条件付きで効果的である。一方、事業持ち株会社による連結経営の推進は、純粋持ち株会社とは別の特徴を持つ。その最大のメリットは、親会社の事業をグループの中核事業として推進しやすい点である。

 事業規模にもよるが、事業持ち株会社の多くは、親会社の事業がグループの中核事業であり、その中核事業の推進を目指しグループ企業が存在している。また、親会社自体が事業執行も行っていることから、ほかのグループ企業同様、執行の視点をしっかりと維持することで事業活動を重視した経営が推進される。このような特徴から、特定の技術に強みを持つ製造業や事業規模がそれほど大きくない場合など、ある程度事業ドメインを絞り込んでいる事業会社については、事業持ち株会社を中心に連結経営を行うことが効果的である。

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