前回(人が生む「知」も重要な経営資源--きちんとナレッジマネジメントしてますか?)は、企業に存在する「知」のマネジメント、いわゆるナレッジマネジメントについて見ていったが、今回は人材の人生に関わる「キャリア」について考えてみよう。
キャリアという言葉には、研究者によって様々な定義がある。
そもそもキャリア(career)という言葉は、フランス語に由来し、競馬場を意味したようだ。その後、過去の職業経験から将来の進路までを含んだ「職業経歴」の概念へと変化し、近年では、職業だけでなく、ライフスタイルまで含んだ人生全体を捉えた広い概念となってきている。
「わが人生に悔いなし」とか言えたらいいね
キャリア研究で知られるDonald E. Super氏は、キャリアについて「キャリアとは生涯において個人が果たす一連の役割、およびその組み合わせ」あるいは「地位、職務、業務の系列である」と定義している。いわば、仕事的な観点から見たその人の人生、と言えるかもしれない。
Super氏は人生における一連のキャリアの発達を「Growth(成長期)」「Exploration(探索期)」「Establishment(確立期)」「Maintenance(維持期)」「Decline(衰退期)」の、5つの段階に区分した「MAXICYCLE」を提案している。ある段階から次の段階に移行(Transition)する時には「MINICYCLE」が発生して、キャリアが発達すると説いた。
MAXICYCLEに示されている「Trial(試行)」の段階は、自分の適性や能力がまだ固まっておらず、どのような仕事に向いているかを試行錯誤する時期であることを示している。Establishment(確立期)に移ると、自分の適性や能力、職場でのポジションを理解するようになる。より自分の適性に合った仕事への関心が高まる時期でもある。
次のMaintenance(維持期)に移ると、築いた地位を維持することに関心が向く。安定を志向し、極力リスクを避けるようになる。そして、Decline(衰退期)になると、より保守的になり、やがてリタイヤを決意してキャリアを終了する。あなたと、あなたの周りの先輩たちはどの時期にあるだろうか。